完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「旦那様……」
そのとき、要さんのお父様の背後で立っていた側近の方が、声を掛けた。
「どうした?」
静かに近づき、耳元で何かを報告している。
私は内容までは聞こえない。
けれど、要さんのお父様の表情が、わずかに変わった。
「……大我の容体のことだ」
その言葉に、胸が跳ねる。
「先ほどの搬送先から連絡が入り、今は処置中だ。出血は多いが、今のところ命に関わる状態ではないらしい」
「本当ですか!?」
「ああ、意識はまだ戻っていないが、医師が対応している」
その言葉に、足の力が抜けそうになる。
「……よかった」
思わず小さく呟いていた。
要さんが、私の手を握り直す。
「そんなに安心されると、なんかムカつくな」
「何言ってるんですか!要さんが刺されていたかもしれないんですよ!?」
小声で言い合いしているのを、要さんのお父様は微笑ましそうに見ていた。
「あの子は……最後まで、宗一郎の側に立たなかった。要たちを庇ったのは偶然ではないだろう」
私は、あの瞬間を思い出す。
「……大我さんは、自分のお父様のことを尊敬していました。だからこそ、あんなことをしているのが許せなかったんでしょう」
要さんのお父様が、私を見る。
「そうかもしれないな」
その声は、先ほどよりも柔らかかった。