完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

要さんが吐き捨てるように言った。


「本音はクソくらえだ。親父たちが何隠してんのか、全部暴く」


私はそっと本棚の陰から覗くことができた。

要さん……嘘でしょう……。

あの完璧王子が……?

私に向けていた優しい表情とは、まるで別人だった。

その時。

ぎゅるるるる……
ごぉぉお……


全身の血の気が引いた。

お、お、お、お腹が鳴ったぁあああ!

しかも長くて大きい。

静かな部屋にははっきり響き、空気がぴたりと止まった。

要さんの声が低く響く。

「……迅」

「はい」

「今の音」

「ええ」

短い沈黙。

椅子がゆっくり動く音がした。

足音が近づいてくる。

一歩。

また一歩。

本棚のすぐ前で止まった。


「……そこにいるのは誰だ」


低くて、冷たい声。

いつもの優しい声とはまるで違う。

峰山さんが小さく言う。


「聞かれた可能性がありますね」


もう隠れていられない。

私はぎゅっと目を閉じて、本棚の陰から顔を出した。


「……あはは」


引きつった笑いが出る。

要さんの目が、ゆっくり見開かれた。

「……花音、さん?」

「えっと……すみません、迷ってしまってダイニングルームだと思って、それで……」

< 34 / 57 >

この作品をシェア

pagetop