完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~

要さんはまだ私を見ていた。

「花音さん」

はっと顔を上げる。

「……本当に、迷っただけ?」

その声は低いままだけど。

さっきより、少しだけトーンが落ちていた。

私は必死に頷く。

「ほ、本当です……!紬ちゃんにダイニング教えてもらったんですけど、右に二回曲がって左に二回って言われて……!」

言いながら、またお腹が

ぐぅ……

と小さく鳴った。

私は真っ赤になった。

もう……なんでこんな時に私のお腹は……

峰山さんが、ふっと顔を逸らす。

どうやら笑いを堪えている。

要さんは、しばらく黙って私を見ていた。

そして……小さくため息をついた。

ゆっくり、銃を下ろす。

「……迅」

「はい」

「とりあえず銃しまえ」

要さんは少し眉を押さえた。

峰山さんが静かに頷き、手にしていた銃を懐に戻した。

部屋の空気が少しだけ緩み、要さんがゆっくり私の方へ歩いてくる。

そして、小さくため息をもらした。

「……はぁ」

ゆっくりと近づいてきて、私の目の前で止まる。

「いいか」

声が低く落ちる。


「さっきのこと……聞こえてただろ?」


< 36 / 57 >

この作品をシェア

pagetop