完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
私はぶんぶん首を振った。
ここで聞いてたなんて言ったら……
「き、聞いてません!」
「……そうか」
要さんの目が細くなる。
そして、低い声で続けた。
「もし聞いてたなら……ここで見たことも聞いたことも全部、忘れろ」
「は、はい……」
心臓がどくんと跳ねた。
「もし変なこと喋ったり、余計な詮索したら九条家がどうなっても、俺は知らねぇ」
お父様とお母様の顔が頭に浮かんだ。
「わ、私……!誰にも言いません!絶対!」
声が震える。
でもここで失敗したら九条家が……。
要さんはじっと私を見つめていた。
嘘を見抜くみたいに。
数秒の沈黙のあと
「……ならいい」
と、くるりと背を向けた。
息が詰まる。
この人は誰なんだろう。
私の知っている獅堂要ではない。
「迅」
「はい」
「花音さんをダイニングまで連れてけ」
要さんは振り返らないまま言う。
「また迷子になられても面倒だ」
その言い方が、とても冷たい。