完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
自分の部屋に戻ってからも、さっきのことが頭から離れなかった。
こんなことで、これからやっていけるんだろうか。
不安が胸の奥にじわじわ広がっていく。
トントン……
その時、控えめなノックの音が響いた。
「……はい?」
私がそっと返事をすると、扉が静かに開く。
現れたのは峰山さんだった。
その手には銀のトレーが載っている。
「夜分に失礼いたします、花音様」
私は驚いて目を瞬いた。
「峰山さん……?」
「要様からです」
そう言って峰山はトレーをテーブルへ置く。
小さなおにぎりと、卵焼き、それから湯気の立つ味噌汁。
優しい香りがふわりと広がった。
「花音様がほとんどお食事を召し上がっていないようだと」
「要さんが……?」
「はい。夜食をお持ちするよう仰せつかりました」
胸の奥が、少しだけ温かくなった。
けれど同時に、夕食前の出来事が頭をよぎる。
銃口、低い声、そしてあの鋭い視線。
私は小さく俯いた。
「……あの」
「はい」
「私……あの……」
言葉を探すように指先をぎゅっと握る。
「要さんが、よくわからなくて……」
峰山さんは黙って私を見る。
「峰山さんにこんなこと言ったって仕方ないと思うんですが……不安なんです」
「不安……ですか」