完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
私は静かに頷いた。
「お母様たちに、心配をかけたくないんです……でも、私が不安そうにしたら余計に心配するから……」
今日だって家を出る時泣いていた。
〝娘を売るような形になってごめんね〟って。
私はこれが生まれた定めだと思っているから、覚悟は決めていたけど……。
母の涙は胸が苦しくなる。
「だからここでちゃんと頑張って、やっていきたいんです」
しばらく沈黙が落ちる。
やがて峰山さんが静かに口を開いた。
「花音様」
「はい」
「先程は……大変失礼いたしました」
「あっ、いえ……元はと言えば私が間違って部屋に入ってしまって」
部屋に入るなって言われてたのに入ったのも悪いよね……
「要様は……あなたが思っているような、怖い方ではございません」
「……そうなんですか?」
「ええ……少々事情がありまして……敏感になっておられますが」
事情ってなんだろう。
でも詮索するなと言われたから聞けない。
穏やかな声で続ける。
「それにあの方は、不器用なだけです」
不器用……
確かに、さっきはあんなに冷たい表情をしていたのに、こうして夜食を用意してくれた。
悪い人ではないと思いたい。