完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「そうなんですね」
「はい……どうか、誤解なさらないでください」
「わかりました……峰山さんに話してよかったです」
話すべきか悩んだけど、不安で押しつぶされそうだったから……。
「それから……」
「なんでしょう」
「迅さんって呼んでもいいですか?」
峰山さんの表情が、ほんのわずかに止まった。
「……迅さん、ですか」
私は慌てて続ける。
「要さんが峰山さんをお名前で呼ばれてたので、いいなって思って……」
親近感が湧くから名前で呼びたいって思ったけど……図々しすぎたかな。
「高野のことも〝紬ちゃん〟と呼ばれていましたよね、使用人なのに」
「でも……私、ここに知ってる人がいなくて。だから……」
私はまっすぐに峰山さんを見た。
「心を開ける人が、ほしいんです」
数秒間静まり返った後、峰山さんは小さく息を吐いた。
「……お好きに」
「本当ですか!」
「……ええ」
「ありがとうございます、迅さん!」
私が笑って駆け寄ると、迅さんがふっと顔を背けた。
「……夜食、冷めないうちにどうぞ」
あ……ちょっと馴れ馴れしかったかな。
でも少しだけ、心が軽くなった気がした。
迅さんが帰ってから、ゆっくりとおにぎりを口に入れる。
「美味しい……」
優しい味がする。
心からそう思えた。