完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
「……包丁触ったことある?」

「えっと……少しだけ」

「少しってどのレベル」

「数回くらいなら……」

相沢さんは腕を組んだ。

「マジで言ってんの?」

「……はい」


怖くて顔が上げられない。

相沢さんはまた大きくため息をついた。

「……はぁ」

そして私に包丁を渡す。

「とりあえず野菜切れ」

「え?」

「包丁の持ち方くらい知ってんだろ」

私は慌ててまな板の前に立った。

相沢さんに渡されたにんじんを置き、包丁を握る。

「こう……?」

「違う」


すぐ隣から声がした。

気づけば相沢さんがすぐ後ろに立っている。

「指」

手を軽く押さえられた。

手を触られ、思わず体が固まる。

でも動揺してる場合ではない。


「切るぞ、それ」

「ひゃっ」

思わず声が出た。

相沢さんは顔をしかめる。

「大げさだろ……そんなんで結婚する気なのかよ」

でも指の位置を直してくれた。

「猫の手とか聞いたことない?」

「……あ、ほんとだ、切りやすい」

私はゆっくり切ってみる。

トン。

トン。

トン。

相沢さんは腕を組んで見ていた。

「……」

数秒後。

「……まあ」

ぼそっと言う。

「思ったよりマシ」

「え、ほんとですか!」

思わず振り向くと、

「近い」

と言われ、私は慌てて前を向いた。
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