完璧王子×天然お嬢様~政略結婚のお相手は、喧嘩も強いんです~
その後も手とり足とり教えてもらい、なんとかスムーズに切れるようになってきた。
相沢さんも最初は面倒くさがっていたけど、意外と面倒見が良くて教えるのも上手だ。
「そうそう、桂剥きは表面の筋がなくなるまで皮を厚めに剥いて……」
「え、こう持つんですか?」
「右手の親指を包丁の刃元に添えるんだよ」
後ろから私の手を掴みながら教えてくれる。
その時だった。
厨房の入口から静かな声が聞こえた。
「……料理指導にしては、距離が近いですね」
空気が一瞬で変わる。
振り向くと、そこには要さんが立っていた。
いつの間に来ていたの!?
私は思わず背筋を伸ばす。
「要様っ!」
相沢さんも振り向き、驚いていた。
そしてすぐに姿勢を正し、一礼する。
「おはようございます……」
要さんが、ゆっくりこちらへ歩いてくる。
その視線が、私と相沢さんの距離を一度だけ見た。
相沢さんが先に口を開く。
「包丁を持たせているので、指を直していただけです」
「そうなんですね、しかし花音さんも獅堂家に入る方です。接し方と言葉遣いには気を付けてください」
「……申し訳ありません」
「か、要さん、相沢さんは私の料理の先生です!」
つい口を挟んでしまった。