きみが春なら
「……母上は、いつもあの物言いか?」

ハルは答えに詰まっている。予想通りの反応にため息を吐く。
喋るのも下手だが、嘘をつくのも苦手らしい。どこまでも王族向きでない女だ。

「俺がいないところで威張り散らして、質の悪い。こんなに早く帰ってくると思わなかったんだろうな」
「……」
「よく覚えていないが、何か言ってやった気がする。少しは大人しくなるだろう」

さっき妻に暴言を放った母の、ぞっとするほど意地の悪い顔。思い出して舌打ちをする。

「まともな子育てなど……自分だってしていないくせにな」

ハルは何も言わず、そっと俺の頭を抱いた。

── そうだ。こんな風に抱きしめてもらった記憶など、ひとつもない。

もう今更、どうだっていいが。
< 181 / 183 >

この作品をシェア

pagetop