冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~
朝の光が障子越しに差し込み、食卓に柔らかな影を落としていた。
紫乃はいつものように、勇心の朝食を運び終えると、軽く一礼して立ち去ろうとする。
「紫乃さんも……ここで食べるか?」
足を止めた紫乃は、思わず振り返った。
「え、……よろしいのですか?」
「夫婦なのだから、当然だ」
(……今まで一度も誘って下さらなかったのに)
心の中でそう呟きながらも、紫乃は「はい」と微笑んで、自分の朝食を用意する。
紫乃は、勇心の向かいに腰を下ろし、夫婦で食卓を囲む幸せを噛みしめる。
昨夜、初めて夫婦らしい時間を過ごしたからなのか。夫の眼差しがいつにも増してあたたかい気がした。
「美味しいですね」
紫乃の口から、つい嬉しさが零れ出す。
(勇心様と一緒に食べると、格別だわ)
「……いつも旨いぞ」
「へ? ……っ」
紫乃の頬がわずかに赤らむ。
「厨房の方々が一生懸命作ってくださってますから」
微笑を浮かべる紫乃を見つめ、勇心は肩を揺らした。
(紫乃さんが作ってくれるから旨いと言ったつもりだったんだが、伝わらなかったみたいだな)
勇心は、紫乃が小さな口で一生懸命もぐもぐと食べる様子を、ちらりと見やった。その視線に気づいた紫乃が、はにかんで俯く。
「……可愛いな」
「えっ……?」
「いや、なんでもない」
目を逸らす勇心の耳が、ほんのり赤く色づいていた。