冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~
紫乃が朝食の片付けを終え、お茶の支度を整え、お盆を手に縁側へと向かう。
背筋を伸ばしたまま目を瞑り、静かに佇むその背中に、紫乃はそっと近づく。
「お茶、いかがですか?」
「……ああ、貰おう」
湯呑を受け取った勇心の指が、紫乃の手に触れる。その瞬間、紫乃の肩がきゅっと竦んだ。
「冷たいな……指先が」
「えっ……あ、すみません。先ほどまで、洗い物をしていたので……」
紫乃が慌てて手を引こうとすると、勇心がその手を包み込むように握り返した。
「血流が悪い証拠だ。……温めるのがいい」
「け、血流……?」
「末端の冷えは、体調を崩す前兆だ。特に若い女性は、冷えは禁物だからな」
(えっ、触れただけでそんなこともわかるの……?)
紫乃は目を瞬かせながら、勇心の手の温もりに包まれている自分の指先を見つめた。おもむろに顔を上げると、勇心の視線が真っすぐ自分を見つめていることに気づく。


