冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~
「……すまぬ。紫乃さんに触れられると思うと……つい」
「っ……、“紫乃”とお呼びください」
「では、俺のことも……“様”はつけないでくれ」
「それはさすがに……」
「夫婦なのだから、いいだろう」
戸惑う紫乃に、勇心は優しく微笑みかける。
「わかりました。……では、“勇心さん”で」
「フッ、“さん”もなくていいのに」
「十歳も違うのですから、それくらいはお許しくださいませ」
紫乃が少し照れた様子で目を伏せた。
「そろそろ、お風呂が沸く頃かと……」
「そうだな」
勇心が寝間着を手にして立ち上がった、その時。紫乃は勇心のシャツの裾をそっと掴んだ。
「あの……その……、お背中、流しましょうか……?」
「っっ……いいか? 頼んでも……」
「はいっ」
視線を泳がせる二人。けれど、そのぎこちなさですら愛おしいと感じる。
二人は頬に熱を帯びるのを感じながら、湯殿へと消えていった。