冷遇令嬢、最恐軍医に嫁ぎました~大正深愛綴り~
数日後、帰宅した勇心が、一枚の紙を差し出してきた。
「……昇級ですか!? 中尉から、大尉に!! おめでとうございます……!」
「ありがとう。任務を全うできたのは、君が待っていてくれたからだ」
「私なんて……、何もしておりませんのに……」
紫乃の声は、震えていた。
知り合いもいない遠い地で、命を落とすかもしれない現場に派遣され、自分の命も顧みず、多くの命を救った彼。
その功績が、こうしてきちんと認められたことに、妻として嬉しく思う。
けれど、それと同時に、何もできない自分への歯がゆさがあったのも事実。
(勇心さんが、必ず帰りたいと思える……そんな家庭にしなければ……)
その晩、屋敷の電話が鳴った。受話器を取ったタミが、驚いたように勇心の顔を仰ぐ。
「若旦那様。……旦那様から、お電話です」
「親父から?」