引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~4
婚姻の儀は終わったはずなのに、華やかな婚礼用の装飾に彩られた白亜の馬車から手を振る皇帝と皇妃の姿に、国民たちはこれからも末永くうまくいくよう願い、祝った。
まるで今嫁入りしてきたかのような盛大な華やかさだ。
宮殿で出発を見届け、そして再び宮殿で出迎えたドーランは、ひどく満足そうだった。
エレスティアは予想をはるかに超えた盛大な行進の目の当たりにし、ジルヴェストが初夜をやり直そうとしているのを感じて恥ずかしかった。
でも――やはり嬉しくもあった。
エレスティアの顔には、ずっと幸せそうな微笑みがあった。
しかもこの日のために、ジルヴェストがたった二週間でとても素晴らしい数着のドレスを用意してくれていた。婚礼用かと思うほど、最高に華やかなものばかりだ。
彼が二人の結婚を特別なものにし、思い出をつくってくれているのを感じた。
午前中いっぱいで王都を回り、そして宮殿で結婚記念式典が執り行われる。
披露宴のようにドレスを着替えて昼餐が始まり、そうしてまたお色直しをして、さらなる祝いの宴へと続いていく。
大勢の貴族が遠方からも駆けつけて、表向きの結婚記念日を祝ってくれた。
結婚一周年ではないし、半年にしてもまだまだ遠い。
しかし、皇帝が『する』と決めた発言力は偉大で、誰も疑問の声を上げなかった。
側近たちも酒が入って珍しく緊張を解き、謎のラインダンスまで披露していた。
これほど和やかなのは、国内の魔獣問題が解決したことも関わっている。
そして本日、一部の者たちがやきもきしていた世継ぎ問題についても、ひとまず希望が持てたということも関係しているのだろう。
祝宴は夜まで続く予定であったが、皇帝と皇妃は早々にお休みになられると伝えられて、日が暮れる前に二人は宴席をあとにした。
エレスティアは後宮でジルヴェストと別れたのち、侍女たちに連れられて、まずは体を清められた。
湯浴みは普段より丁寧だった。朝から予定を多くこなしたので、疲労を取るマッサージも施された。顔から足の先まで肌も磨き上げられていく。
髪には、甘い香りのオイルも施された。
「殿方もいい気分になる香りですわ」
「は、はいっ」
「ふふ、そう緊張なさらないでくださいませ」
「そうですわ。皇帝陛下が、よきようにしてくださいますから」
それはエレスティアも知っている。ジルヴェストを信頼してもいる。
夫婦が何をするのかは前世で知っていた。だが、わかっていても相手がジルヴェストだと思うと、無性に胸がどきどきしてしまうのだ。
着せられたナイトドレスは少し透けていた。
胸の形がやけに主張されて谷間は大きく覗いてるし、横になっている状態でもリボンをほどくと脱がしやすくなる仕様だ。
さすがに少々派手ではないかとエレスティアは恥ずかしくなる。
(でも初夜であれば、これくらいの演出は珍しくないし……あっ、そういえば後宮入りした日のものは違っていたわ)
それもまた、ジルヴェストの気遣いだったのだろう。
出会った時から優しい人だった。彼の表情や眼差しにどんな考えが含まれているのか読み取れず、ヴェールを取られる際にエレスティアが一方的に怖がった。
けれど彼は、そんなエレスティアの緊張もほぐしてくれた。
時間をかけて安心できる場を提供してくれた。
恋に、落ちるのはあっという間だった気がする。
(彼と出会えて、よかった)
「あらあら、皇妃様」
「いかがされましたか?」
エレスティアの目尻に浮かんだ涙を、慌てて侍女たちが拭う。
「ご、ごめんなさい、瞼を腫らしてはいけないのに」
「いいえ、婚姻の日のやり直しのため皇帝陛下がこのような素晴らしい計らいをしてくださったのですもの。胸がいっぱいになりますわよね」
三日間続く祝日は、皇帝と皇妃が公休を取るためだ。
夫婦でゆっくりと過ごせるように彼が設定してくれた。エレスティアがベッドから動けなくなっても罪悪感を覚えてしまわないよう、そして特別な日を急いて過ごしてしまいたくない、というジルヴェストの思いがあった。
「あの……後宮入りの日も着替えを手伝ってくださいましたよね? あの時の衣装って……」
「皇帝陛下がご指示されたと聞きましたわ。それから、後宮入りされた翌日に大急ぎでクローゼットにいらっしゃいましたわね」
「ジルヴェスト様が?」
「ええ。それにはわたくしたちも驚きました」
侍女たちの話によると、ジルヴェストは多忙の中で時間を見つけて先触れもなしに後宮にやって来たそうだ。そして自ら衣装を厳選していたという。
(恐らく……共に眠る私のことを考えてくださったんだわ)
侍女たちは、ジルヴェストがそれだけエレスティアを受け入れ、大切にしようとしていたのだと感じ、誠心誠意仕えようと心に決めたそうだ。
まるで今嫁入りしてきたかのような盛大な華やかさだ。
宮殿で出発を見届け、そして再び宮殿で出迎えたドーランは、ひどく満足そうだった。
エレスティアは予想をはるかに超えた盛大な行進の目の当たりにし、ジルヴェストが初夜をやり直そうとしているのを感じて恥ずかしかった。
でも――やはり嬉しくもあった。
エレスティアの顔には、ずっと幸せそうな微笑みがあった。
しかもこの日のために、ジルヴェストがたった二週間でとても素晴らしい数着のドレスを用意してくれていた。婚礼用かと思うほど、最高に華やかなものばかりだ。
彼が二人の結婚を特別なものにし、思い出をつくってくれているのを感じた。
午前中いっぱいで王都を回り、そして宮殿で結婚記念式典が執り行われる。
披露宴のようにドレスを着替えて昼餐が始まり、そうしてまたお色直しをして、さらなる祝いの宴へと続いていく。
大勢の貴族が遠方からも駆けつけて、表向きの結婚記念日を祝ってくれた。
結婚一周年ではないし、半年にしてもまだまだ遠い。
しかし、皇帝が『する』と決めた発言力は偉大で、誰も疑問の声を上げなかった。
側近たちも酒が入って珍しく緊張を解き、謎のラインダンスまで披露していた。
これほど和やかなのは、国内の魔獣問題が解決したことも関わっている。
そして本日、一部の者たちがやきもきしていた世継ぎ問題についても、ひとまず希望が持てたということも関係しているのだろう。
祝宴は夜まで続く予定であったが、皇帝と皇妃は早々にお休みになられると伝えられて、日が暮れる前に二人は宴席をあとにした。
エレスティアは後宮でジルヴェストと別れたのち、侍女たちに連れられて、まずは体を清められた。
湯浴みは普段より丁寧だった。朝から予定を多くこなしたので、疲労を取るマッサージも施された。顔から足の先まで肌も磨き上げられていく。
髪には、甘い香りのオイルも施された。
「殿方もいい気分になる香りですわ」
「は、はいっ」
「ふふ、そう緊張なさらないでくださいませ」
「そうですわ。皇帝陛下が、よきようにしてくださいますから」
それはエレスティアも知っている。ジルヴェストを信頼してもいる。
夫婦が何をするのかは前世で知っていた。だが、わかっていても相手がジルヴェストだと思うと、無性に胸がどきどきしてしまうのだ。
着せられたナイトドレスは少し透けていた。
胸の形がやけに主張されて谷間は大きく覗いてるし、横になっている状態でもリボンをほどくと脱がしやすくなる仕様だ。
さすがに少々派手ではないかとエレスティアは恥ずかしくなる。
(でも初夜であれば、これくらいの演出は珍しくないし……あっ、そういえば後宮入りした日のものは違っていたわ)
それもまた、ジルヴェストの気遣いだったのだろう。
出会った時から優しい人だった。彼の表情や眼差しにどんな考えが含まれているのか読み取れず、ヴェールを取られる際にエレスティアが一方的に怖がった。
けれど彼は、そんなエレスティアの緊張もほぐしてくれた。
時間をかけて安心できる場を提供してくれた。
恋に、落ちるのはあっという間だった気がする。
(彼と出会えて、よかった)
「あらあら、皇妃様」
「いかがされましたか?」
エレスティアの目尻に浮かんだ涙を、慌てて侍女たちが拭う。
「ご、ごめんなさい、瞼を腫らしてはいけないのに」
「いいえ、婚姻の日のやり直しのため皇帝陛下がこのような素晴らしい計らいをしてくださったのですもの。胸がいっぱいになりますわよね」
三日間続く祝日は、皇帝と皇妃が公休を取るためだ。
夫婦でゆっくりと過ごせるように彼が設定してくれた。エレスティアがベッドから動けなくなっても罪悪感を覚えてしまわないよう、そして特別な日を急いて過ごしてしまいたくない、というジルヴェストの思いがあった。
「あの……後宮入りの日も着替えを手伝ってくださいましたよね? あの時の衣装って……」
「皇帝陛下がご指示されたと聞きましたわ。それから、後宮入りされた翌日に大急ぎでクローゼットにいらっしゃいましたわね」
「ジルヴェスト様が?」
「ええ。それにはわたくしたちも驚きました」
侍女たちの話によると、ジルヴェストは多忙の中で時間を見つけて先触れもなしに後宮にやって来たそうだ。そして自ら衣装を厳選していたという。
(恐らく……共に眠る私のことを考えてくださったんだわ)
侍女たちは、ジルヴェストがそれだけエレスティアを受け入れ、大切にしようとしていたのだと感じ、誠心誠意仕えようと心に決めたそうだ。