引きこもり令嬢は皇妃になんてなりたくない!~強面皇帝の溺愛が駄々漏れで困ります~4
彼は、グレートドラゴンの出現をきっかけにエレスティアが召喚したのだ。
そして彼自身が、攻撃をためらう優しい彼女の、最大の攻撃魔法となった。
そのことについてドーランたちに説明する必要があるということを理由に、アイリーシャには、同席せず一緒に帰国した令嬢たちとパーティー会場を任せたいと伝えていた。ピィちゃんが会場のスイーツを食べ飽きたら、古代王ゾルジアが受け取る手筈だ。
(初めから大王様に預かってもらう方法もあったのだけれど……)
心獣と似たような存在になっているためか、ピィちゃんは古代王ゾルジアの肩もお気に入りだった。
兄たちいわく――。
『お前にそっくりだからじゃないか?』
『ああ、まるでエレスティアをそのまま男にしたようだぜ』
――ということらしいが、そのへんはあまり実感がない。
今、エレスティアの心の片隅からちくちくと刺してくる罪悪感は、この場からアイリーシャを排除してしまったことだ。
帰国する際、兄たちに『皇帝との初夜が決行されていないことを打ち明けるにしても、彼女だと騒ぎ立てる可能性がある』と引き留められたのだ。
ジルヴェストも引き続き教えないでおこうと、アインスをはじめとする護衛騎士たちと話し合って即結論を出していた。
実は、皇帝と皇妃の初夜は決行されていない。
それを知ったオヴェール公爵家から、婚姻を撤回されたり戦争を起こされたりしてはたまらないと心配し、隠しておいたのだ。
だが、古代王ゾルジアがこの世に召喚され、そばにいることによってエレスティアの暴走の心配は皆無となった。
そこでこのたび、初夜を迎えられるという報告と合わせて、後宮で肉体関係は持っていなかったという事実が打ち明けられることになったのだ。
それは、ドーランに隠し事をしたくないといったジルヴェストの思いも含まれている。
大事な女性を、心から大切にして一人で育て上げた父だから、と。
その想いはドーランに届くだろうとエレスティアも思っていた。
場の感じからするに、予定通り、エレスティアが来る前にはその話が男たちの間で終了したのが見て取れる。
(宰相様も胃痛から解放されたみたい。お父様もジルヴェスト様の思いは受け取ってくれたはずだけれど、あの笑顔はどういう意味なのかしら……? 納得されていない、とか?)
心配になって兄たちのほうを見る。腕を組んで壁に背を預けている長兄のリックスが、肩をすくめてみせてきた。
すると、そばにいた次兄のギルスタンが、何やら仕草を交えて小声で伝えてくる。
「父親だから初夜うんぬんは納得がいかないんだ、放っておけ」
(なるほど……)
エレスティアは理解して頬が少し熱くなる。
視線を移動すると、上座の一人掛けソファにいたジルヴェストが、パーティーの時よりも疲れたような表情で答えてくる。
「……牽制を受けた」
「ははっ、初夜のことを知られましたからな」
少しほろ酔い気味でティーボ将軍がジルヴェストの肩を叩く。
どうやら夫は、これから手を出すことについてドーランから牽制を加えられたようだ。エレスティアは少しだけ笑ってしまう。
(ジルヴェスト様には悪いけれど――父の愛が、嬉しいわ)
はにかみそうになるのをこらえて室内を進んだ。
ジルヴェストの近くにあった壁際の円卓で、アインスの監視のもとひたすらケーキを頬張っていた金色の小鳥、ピィちゃんの姿がある。
(あら、私が会場を出たあと、すぐ大王様が引き取ったのかしら?)
会場に入る際、自分には少しやることがあるのでそばにいられないとはピィちゃんに言い聞かせていた。アイリーシャがよくしてくれるので、彼女のそばにいてね、と。
けれどピィちゃんだって、心獣だ。もしかしたらエレスティアが会場を抜け出したのを見て、心配になったのかもしれない。
そう想像すると、エレスティアはいじらしさに胸がきゅうんとする。
(大王様と一緒にここにくる予定だったけれど、そうだとしたら何も言えないわね。なんてかわいい子かしら)
熱く見つめていると、ピィちゃんがハタと気づいた。
「ぴっ」
ようやく顔を向けたピィちゃんが、残るケーキを急ぎ口へ押し込み、小さな翼を羽ばたかせてエレスティアのもとに向かう。
それを軍人の魔法師たちが唖然と目で追った。
「……相変わらず食い意地のすごい小鳥だ。食べていて主人を忘れていたのか?」
「心獣とは思えんな……翼も小さすぎるし、飛行するのに魔力を使っているのだろうか?」
「わからん。カーター殿が調べたがる理由も理解できる気がする」
この場に呼ばれたのは、ジルヴェストにとって信頼の置ける者たちだ。
そして彼自身が、攻撃をためらう優しい彼女の、最大の攻撃魔法となった。
そのことについてドーランたちに説明する必要があるということを理由に、アイリーシャには、同席せず一緒に帰国した令嬢たちとパーティー会場を任せたいと伝えていた。ピィちゃんが会場のスイーツを食べ飽きたら、古代王ゾルジアが受け取る手筈だ。
(初めから大王様に預かってもらう方法もあったのだけれど……)
心獣と似たような存在になっているためか、ピィちゃんは古代王ゾルジアの肩もお気に入りだった。
兄たちいわく――。
『お前にそっくりだからじゃないか?』
『ああ、まるでエレスティアをそのまま男にしたようだぜ』
――ということらしいが、そのへんはあまり実感がない。
今、エレスティアの心の片隅からちくちくと刺してくる罪悪感は、この場からアイリーシャを排除してしまったことだ。
帰国する際、兄たちに『皇帝との初夜が決行されていないことを打ち明けるにしても、彼女だと騒ぎ立てる可能性がある』と引き留められたのだ。
ジルヴェストも引き続き教えないでおこうと、アインスをはじめとする護衛騎士たちと話し合って即結論を出していた。
実は、皇帝と皇妃の初夜は決行されていない。
それを知ったオヴェール公爵家から、婚姻を撤回されたり戦争を起こされたりしてはたまらないと心配し、隠しておいたのだ。
だが、古代王ゾルジアがこの世に召喚され、そばにいることによってエレスティアの暴走の心配は皆無となった。
そこでこのたび、初夜を迎えられるという報告と合わせて、後宮で肉体関係は持っていなかったという事実が打ち明けられることになったのだ。
それは、ドーランに隠し事をしたくないといったジルヴェストの思いも含まれている。
大事な女性を、心から大切にして一人で育て上げた父だから、と。
その想いはドーランに届くだろうとエレスティアも思っていた。
場の感じからするに、予定通り、エレスティアが来る前にはその話が男たちの間で終了したのが見て取れる。
(宰相様も胃痛から解放されたみたい。お父様もジルヴェスト様の思いは受け取ってくれたはずだけれど、あの笑顔はどういう意味なのかしら……? 納得されていない、とか?)
心配になって兄たちのほうを見る。腕を組んで壁に背を預けている長兄のリックスが、肩をすくめてみせてきた。
すると、そばにいた次兄のギルスタンが、何やら仕草を交えて小声で伝えてくる。
「父親だから初夜うんぬんは納得がいかないんだ、放っておけ」
(なるほど……)
エレスティアは理解して頬が少し熱くなる。
視線を移動すると、上座の一人掛けソファにいたジルヴェストが、パーティーの時よりも疲れたような表情で答えてくる。
「……牽制を受けた」
「ははっ、初夜のことを知られましたからな」
少しほろ酔い気味でティーボ将軍がジルヴェストの肩を叩く。
どうやら夫は、これから手を出すことについてドーランから牽制を加えられたようだ。エレスティアは少しだけ笑ってしまう。
(ジルヴェスト様には悪いけれど――父の愛が、嬉しいわ)
はにかみそうになるのをこらえて室内を進んだ。
ジルヴェストの近くにあった壁際の円卓で、アインスの監視のもとひたすらケーキを頬張っていた金色の小鳥、ピィちゃんの姿がある。
(あら、私が会場を出たあと、すぐ大王様が引き取ったのかしら?)
会場に入る際、自分には少しやることがあるのでそばにいられないとはピィちゃんに言い聞かせていた。アイリーシャがよくしてくれるので、彼女のそばにいてね、と。
けれどピィちゃんだって、心獣だ。もしかしたらエレスティアが会場を抜け出したのを見て、心配になったのかもしれない。
そう想像すると、エレスティアはいじらしさに胸がきゅうんとする。
(大王様と一緒にここにくる予定だったけれど、そうだとしたら何も言えないわね。なんてかわいい子かしら)
熱く見つめていると、ピィちゃんがハタと気づいた。
「ぴっ」
ようやく顔を向けたピィちゃんが、残るケーキを急ぎ口へ押し込み、小さな翼を羽ばたかせてエレスティアのもとに向かう。
それを軍人の魔法師たちが唖然と目で追った。
「……相変わらず食い意地のすごい小鳥だ。食べていて主人を忘れていたのか?」
「心獣とは思えんな……翼も小さすぎるし、飛行するのに魔力を使っているのだろうか?」
「わからん。カーター殿が調べたがる理由も理解できる気がする」
この場に呼ばれたのは、ジルヴェストにとって信頼の置ける者たちだ。