†鑑査委員制度†
その後も幾つかの出来事を思い浮かべたが、どうもしっくりこなかった。
仕方なしに、まだマシかと思われる出来事をあげる。
「久保田さんと金沢さんが、僕が集めるはずだった数学のプリントを、まとめて持ってきてくれました。あれ、凄く機転が効いていて助かったんですけど・・・そんな事だと駄目ですか?」
そう言い先生を見上げると、思いのほかそこには穏やかな笑みが浮かんでいた。
「いいですね、そういうの。細やかな思いやりが目に浮かびます。とてもいい」
それにしましょう。そう最後に付け足して、先生は本当に嬉しそうに笑った。
自分から言っといてなんだが、本当にそんな事でいいのだろうか?
まぁ何でもいいか・・・
俺はそれに頷いて、赤色のボールペンの芯を押し出す。
日付をひとまず書き込んだところで、再び振り向いて先生を見上げた。
「この場合は、一つの枠に二名の名前を書くべきですか?」
「いえ、手間かと思いますが別々でお願いします」
「分かりました」
答えてから“久保田莉加”“金沢奈美”と上から順に記入し、次に長めに設けられている枠に同じ内容を書き込んでゆく。
・・・結構手間だよなこれ。
一人目を書き終えた段階で、目線を手元の紙に落としたまま、柴田先生に質問をしてみた。
「昨日、先生もおっしゃてましたけど、どうして鑑査委員同士の接触を禁止しているんでしょうか」
今日の話だと、自分のクラスに限らず鑑査の対象は学校全体なわけだろう?
なら、せめて周辺クラスだけでも連携できた方が、あきらかに事がスムーズにいくだろうし、効率も情報量も格段にいいだろう。
自分が昨日さっそく、その決まりを破ってしまったという後ろ暗さを引いたとしても
学校側も何より多くの生徒の内情を耳に入れたいはずなのはもう分かりきっているし、そう考えると、この決まりがあるのは不自然に思えた。