†鑑査委員制度†


椿千里との約束通り、そのままD組に向かうつもりで幾つかの教室を足早に横切る。


するとたった今、自分が通り過ぎたばかりの教室の扉が開く音を背後で聞き、俺をとっさに振り返った。


「あれ?透くん」


するとそこにはきょとんとした顔をした椿千里の姿があり、俺は驚きのあまりその場で硬直した。


「・・・千里くん、どうしてこんなところに?」


そして俺はその教室のプレートを確認して承知する。


“準備室”ここは普段けして使われない一室の一つだ。


どうやらここが彼の与えられた部屋らしかった。


「びっくりした。丁度そろそろかと思って、D組に行くつもりだったんだ。あっここ俺の鑑査室ね」


彼のもとへ歩み寄ると、室内に促された。


足を踏み入れた途端、資料室とはまた違う埃やカビの匂いが鼻についた。そして何より物の多さに驚く。


多分、ここは普段授業を行っている教室ほどの広さはあるだろう。


奥行きがかなりあるし、入る前まで俺はここをただの空き教室だと思って外観を通りすぎようとしてきたのだ。


沢山の銀色の鉄パイプのラックがまるで迷路のように所狭しと並び、ラックには壊れた地球儀やビーカー、中には錆び付いたパイプ椅子何かもある。


何の規則性もなく、学校の備品と思われる物がラックいっぱいに積められてあった。


俺は千里くんの後を、ラックの迷路に時折目を這わせながらついて行く。


「ここは昔使われていた教材とか、壊れた備品をぶち込んでる場所らしいよ」


彼に目を向けると、椿千里は技巧がかった仕草で肩を持ち上げていた。


「へぇなんだか興味深いね」


俺が相づちを打ったタイミングで、今までのくねくねしたラックの道が嘘のような、突然開けた空間に出た。


そこには資料室と同じように教員用の机一式と、姫宮ミコトが怖い顔で仁王立ちしていた。


俺が姫宮さんのそんな姿に面食らったのもつかの間、千里くんは姫宮さんの前まで歩み寄り、いきなり正座をしだした。


はっ!?何ごと!?
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