音のない世界で、君に恋をする。
「夜に一人で歩くな」
少しだけ目が鋭くなって、険しい顔をしている。
たぶん、怒っている。
だけど、さっきよりゆっくり喋ってくれているのか、口が読みやすい。
【気分転換したくて】
スマホにそう打って、見せた。
「だからって、危ねぇ場所来んな」
彼はポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
タバコを咥える姿も様になる。
私はその姿を、横からじっと見ていた。
デニムに、白いTシャツ。
上に羽織った黒のパーカーのフードを被っている。
シンプルな服装なのに、やっぱり異様なオーラを放っている。
「名前」
ふーっと白い息を吐いた彼が、私の方を向いて、そう口を動かした。
「まだ聞いてなかったな」
そう続けたのを見て、慌ててスマホを開く。
【白石澪】とだけ書いて、見せる。
「澪、か」
スマホを見ながら口にする彼に、こくっと頷く。
「俺は、黒崎湊だ」
少しだけ、目を細めた気がした湊さんは、また前を向いてタバコを吸い始めた。