音のない世界で、君に恋をする。
着いたのは、繁華街から少し離れた場所にある雑居ビル。
人気が全然無くて、繁華街よりも静かな気がする。
よく知りもしない男の人になぜ着いてきたのか、自分でも分からない。
ただ、湊さんは、耳が聞こえないと知っても、軽蔑したような目を向けてこなかったというだけで、ここまで来てしまった。
落書きだらけの入り口。
その入り口を入ると、中にいくつかのドアがあって、一番手前のドアを湊さんが開けて入っていき、私もそのあとに続いた。
中からは、タバコのにおいと、香水のようなにおい。
ソファやローテーブル、テレビにゲーム機など、色々なものが置かれている。
いくつか置いてあるソファに座っていた四人の男の人が、一斉にこっちを向いた。
「湊?」
「え、女?」
「誰?」
何を言っているかは分からないけど、口がざわざわと動いて、思わず固まる。
「俺の客」
不安になって湊さんの顔を見ると、そう言った気がした。