音のない世界で、君に恋をする。
透さんが冷蔵庫からジュースを持ってきてくれて、一口飲む。
「ねぇ湊。こんな可愛い子どーしたの?」
「拾った」
陽翔さんと湊さんが喋っているけど、口の動きが早くて分からない。
颯馬さんも何か喋っていたけど、一度に何人も喋ると、口の動きが読めないので、静かにその場に座っていた。
少しして、話が終わったらしい陽翔さんたちが話しかけてくれて、色々なことを教えてくれた。
湊さんたちはみんな同い年で、私の一個上ということ。
陽翔さんが、女たらしなこと。
颯馬さんは、趣味が筋トレなこと。
透さんは、頭が良くて成績トップなこと。
燐さんは、怒らせたら怖いということ。
聞こえない私のために、たまにスマホに書いてくれたり、ゆっくり喋ってくれたりして、とても温かかった。
みんな深いことは聞かずにいてくれて、全部忘れられていた気がする。
話に夢中になる私の肩を、湊先輩が横から叩いた。
「そろそろ帰るぞ」
時計を見れば、時刻は22時前だった。
家を出たのがたぶん18時くらいだったから、あっという間に過ぎた時間に少し驚く。