音のない世界で、君に恋をする。



その日から、昼休みは屋上で過ごすようになった。



———湊さんと一緒に。





特に何かを話すわけではない。



湊さんはすぐ目を瞑っちゃうし、私は何も言わずにお弁当を食べている。





だけど、湊さんと過ごすその唯一の時間が、私の癒しだった。



私たちの間に言葉は無いのに、同じ空間に居るだけなのに、居心地が良かった。



クラスでどんな噂を流されてるのか分からないけど、湊さんといるときだけは、そんなことを考えないでいられた。





湊さんは、いつもお昼ごはんを食べていない。



毎日ブラックの缶コーヒーを飲んでいるだけ。



お腹空かないのかな……。





今日もまた、屋上に湊さんがやって来た。





いつものように缶コーヒーを開ける湊さんを見つめていたら、視線に気づいてこっちを向いた。



「ん?」



不思議そうに見つめている。





私は箸で掴んだ卵焼きを差し出して、【食べますか?】と打ってスマホを見せた。





見せたあと、我に返って自分でびっくりする。



こんなこと、今まで言ったことがない。





卵焼きを見つめたまま黙っている湊さんに、心臓が早くなるのが分かった。


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