音のない世界で、君に恋をする。



いつもの場所に座って、お弁当を開けていると、すぐに湊さんはやって来た。



「……風強いな」



そう言いながら腰を下ろす湊さんは、いつもと変わらない表情で、少しだけ安心する。





胸の中にあったモヤモヤが、湊さんの顔を見ただけで少し晴れた気がした。





「……なんかあったか」



私の方をじっと見つめる視線に気づいて顔を上げると、突然そんなことを言われた。



まさか顔に出ているとは思わなくて、小さく首を振る。





先輩の目が、一瞬だけ鋭くなった。



「お前、無理してねぇか」





ドクン、と心臓が跳ねた。



どうして、湊さんはいつも私のことを見抜いてるみたいな言い方するの。





【してません】



震える指でそう打つ私を、彼はじっと見つめていた。





「嘘つくと、目、泳ぐ」





その言葉に、思わず目を逸らした。



……図星だったから。





風が強くなって、スカートが揺れる。



【迷惑かけたくないだけです】



彼はすぐには何も言わなくて、少ししてゆっくり口を動かした。



「誰に」



“みんな”



そう打ちかけたけど、慌てて消した。


< 26 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop