音のない世界で、君に恋をする。
いつもの場所に座って、お弁当を開けていると、すぐに湊さんはやって来た。
「……風強いな」
そう言いながら腰を下ろす湊さんは、いつもと変わらない表情で、少しだけ安心する。
胸の中にあったモヤモヤが、湊さんの顔を見ただけで少し晴れた気がした。
「……なんかあったか」
私の方をじっと見つめる視線に気づいて顔を上げると、突然そんなことを言われた。
まさか顔に出ているとは思わなくて、小さく首を振る。
先輩の目が、一瞬だけ鋭くなった。
「お前、無理してねぇか」
ドクン、と心臓が跳ねた。
どうして、湊さんはいつも私のことを見抜いてるみたいな言い方するの。
【してません】
震える指でそう打つ私を、彼はじっと見つめていた。
「嘘つくと、目、泳ぐ」
その言葉に、思わず目を逸らした。
……図星だったから。
風が強くなって、スカートが揺れる。
【迷惑かけたくないだけです】
彼はすぐには何も言わなくて、少ししてゆっくり口を動かした。
「誰に」
“みんな”
そう打ちかけたけど、慌てて消した。