音のない世界で、君に恋をする。
あれから数日が経った。
昼休み前、先生が出ていって、空気が緩む。
私は、机で静かにノートを閉じていた。
「ねぇねぇ」
肩を叩くと同時に、前の席の女子が話しかけてきた。
「湊先輩と知り合いなの?」
ざわついた教室が、静かになる気がした。
聞こえないふりをしているだけで、きっとみんなの耳はこっちに向いている。
【少しだけ】
スマホを見せると、ニヤニヤと笑っている。
「少しだけ、で屋上毎日?」
“屋上”という言葉に、少し敏感に反応してしまう。
……まさか、バレてたなんて。
「付き合ってるの?」
なんの躊躇いもなく、直球で聞いてくる。
思いがけない言葉に、慌てて文字を打つ。
【ちがいます】
「でもさ、夜も一緒にいたって聞いたよ?」
全部バレていて、心臓が跳ねた。
「立場分かってる?」
喉の奥がきゅっと締まる。
……分かってる、はず。
私なんかが関わっちゃいけない人なのは、痛いくらいに分かっている。