音のない世界で、君に恋をする。
そのとき、みんなが一斉にドアの方を向いたので、少し遅れて私もそっちに顔を向けた。
そこに立っていたのは、———湊さんだった。
一瞬にして空気が凍る。
いつから居たんだろう、変なこと聞かれてないといいけど……。
「澪」
湊さんが、私の名前を読んだ。
教室にいるみんなが、今度は一斉に私を見る。
さっきまで話していた子が、ぎこちなく笑う。
「え、なに?ほんとに呼びにきたんだけど……」
湊さんが何かに気づいて教室を見渡したあと、少し怪訝そうな顔をした。
静かにこっちへ歩いてきて、私の前で止まる。
「行くぞ」
そう言って私のお弁当を持って、もう片方の手で私の腕を掴んで歩きだそうとする。
でも、視線だけは女子たちに向いている。
怒鳴るわけでもなく、威圧するわけでもなく、ただ冷たい目をして、一言。
「なんか用?」
女子たちは圧倒されたのか、固まっている。
「い、いや……別に……」
さっきの女子が答えると、それ以上何も言わない。
教室を出ても、湊さんは無言のまま屋上まで向かった。