音のない世界で、君に恋をする。



そのとき、みんなが一斉にドアの方を向いたので、少し遅れて私もそっちに顔を向けた。





そこに立っていたのは、———湊さんだった。





一瞬にして空気が凍る。



いつから居たんだろう、変なこと聞かれてないといいけど……。





「澪」



湊さんが、私の名前を読んだ。



教室にいるみんなが、今度は一斉に私を見る。





さっきまで話していた子が、ぎこちなく笑う。



「え、なに?ほんとに呼びにきたんだけど……」





湊さんが何かに気づいて教室を見渡したあと、少し怪訝そうな顔をした。



静かにこっちへ歩いてきて、私の前で止まる。



「行くぞ」



そう言って私のお弁当を持って、もう片方の手で私の腕を掴んで歩きだそうとする。



でも、視線だけは女子たちに向いている。





怒鳴るわけでもなく、威圧するわけでもなく、ただ冷たい目をして、一言。



「なんか用?」





女子たちは圧倒されたのか、固まっている。



「い、いや……別に……」



さっきの女子が答えると、それ以上何も言わない。



教室を出ても、湊さんは無言のまま屋上まで向かった。


< 30 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop