音のない世界で、君に恋をする。
屋上に着いてから、ようやく湊さんが口を動かした。
「大丈夫か」
その目はいつもよりも優しくて、小さく首を振った。
【平気です】
湊さんが少しだけ眉を顰める。
「平気じゃなくていい」
教室を出るときに掴まれた左腕はそのままに、湊さんは続ける。
「怖いなら、怖いままでいい」
湊さんの手の温かさが伝わって、心まで温かくなっていく気がする。
「ひとりじゃない」
その言葉に、鼻の奥がツンとする。
“ひとりじゃない”
ずっと、暗闇にひとりぼっちだと思っていた。
そんな言葉をかけてくれる人は、友達にも、家族にも、どこにもいなかった。
まだ出会って二週間くらいしか経ってないのに、湊さんは私の冷え切った心を温めてくれる。
私の考えていること、欲しい言葉、全部見透かされてるみたいに。
だから、信じてしまいそうになる。
心を許してしまいそうになる。
湊さんは、私のことをめんどくさいって思わないんじゃないかって。