音のない世界で、君に恋をする。
儚い存在 —side Minato—
ずっと、退屈な日々だった。
毎日同じことの繰り返し。
退屈な授業をサボって向かう屋上、なんとなくイライラしてする喧嘩、仲間と一緒に過ごす溜まり場。
それなりに楽しいけど、それなりでしかない毎日。
———あの日までは。
俺はまだ知らなかった。
音のない世界で生きている女の子に、声が届かない彼女に、恋をするなんて———
春休みが開けて、高校二年になった。
毎日溜まり場で仲間と過ごしていただけの春休みは、とても楽だった。
今日から新学期、本当はサボりたい気持ちが山々だったけど、昨日の夜、母親に言われてしまった。
“このままサボり続けてたら、卒業できないって”
母親はそんなに俺のすることに口出しするタイプではない。
やりたいことをやればいいっていう、いわば放任主義みたいなもん。
だけど、母子家庭なのに高い金払って私立に通わせてくれてるから、高校を卒業することだけが俺の唯一できる親孝行だった。
高校だけは卒業しろって言われてきたから、それだけはちゃんとするって入学したときからずっと決めてた。