音のない世界で、君に恋をする。



入学式は、人一倍、神経を使う。



みんなが一斉に立ったり座ったりする場面で、出遅れないように。





普通の高校に来たのが間違いだった気もする。



お父さんは、私を(ろう)学校に入れようとした。



私も、あんな風に呼ばれるなら、そっちの方が良かった。





だけど、お母さんはどうしても私をみんなと同じように育てたかったみたい。



お父さんの反対を押し切って、普通校に入れさせられた。





あの日以来、お母さんは私に厳しくなった。



聞こえなくても、不自由しないように、と。



良い成績を取らないと怒られたし、学校に行きたくないと言っても、無理やり行かされた。





“普通の子は”



それがお母さんの口癖になった。





今考えれば、一番現実を受け止めきれなかったのは、お母さんだったのかもしれない。


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