音のない世界で、君に恋をする。



式が終わり、ホームルームが始まった。



黒板には“自己紹介”の文字が書かれている。





まだ私の耳が聞こえないと知る人はいない。



どんな反応をされるのか、ドキドキが止まらなかった。





クラスメイトが一人ずつ前に出て、次々に自己紹介をする。



みんな名前と一緒に何か喋っているけど、私には何も分からない。



最初は頑張って口を読もうとしてみたけど、早く喋られると読むのが難しくて、三人目で諦めた。





どんどん私の番が近づいてきて、心臓がうるさい。



事前に名前を書いておいたノートを、膝の上でぎゅっと握りしめた。





前の席の人が戻ってきて、私の番だ。



ノートを手に持って、震える足で教卓の前に立った。





【白石澪です。よろしくお願いします。】



私の行動に、クラス中がぽかんとしている。





当たり前だ。



自分の声で喋らずに、無言でノートを見せているんだから。





一ページめくって、またみんなに見せた。



【耳が聞こえません】





その文字を見せた瞬間、何も聞こえないのに、教室がざわついた気がした。


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