花束に囲まれた君が残したもの。

ー共鳴するー



ー「ハギくんが車に轢かれた」ー

ヒマが放った一言でなにか全てが崩れる音がした。
気がついた僕はヒマから聞いた病院にいた。

服も髪も乱れ、ベルトはしていないしメガネも忘れた。
靴のかかとは踏みつけていたし、上着は羽織ってない。
手元には携帯以外何も持っていなかった。

病院の待合所に着くと目を真っ赤にしたヒマがいた。
 
「ツバキ…」

そういうとヒマは僕に抱きついてきた。

体は震えているのに抱きつく力はとても強かった。
ヒマの冷たい涙が僕の服を通して伝わってくる。
ヒマは僕の服に顔を埋めながら声を震わせて言った。
 
「ヒマ…どういう状況か教えてくれない?」
 僕はそっとヒマに言った。
 
「ハギくん、みんなと別れた帰り…シーちゃんと帰ってたんだって…それでそれで…ちょっと喧嘩しちゃったらしくて。別々で帰ろうとした矢先、居眠り運転の車がシーちゃんに向かってきてて…ハギくんが守ったって…」

「ハギはそれで…」
僕は冷や汗が止まらなかった。

「今緊急治療室にいるの…」

僕は病院内を見渡した。
暗がりの中ポツポツと光る看板を頼りに辺りを見渡す。

緊急治療室はどこだ。

病室の入口近い待合所にあるはずもない治療室を立ち止まったまま血眼に探す。
ハギは…ハギはどこだ。

「くっそ…。」
血眼の僕の瞳には涙が溢れていた。

ハギは今どこにいる。
ハギはなんで。ハギは…

ヒマの震えが伝わるのも相まって焦りでパニックになりかけている。

落ち着け。落ち着け。落ち着け。

僕は上を向き、目をつぶって落ち着こうとした。
目はつぶっているのに頬に涙が流れるのが冷たく伝わる。

鼓動が早くてとても騒がしい音が自分の中で響く。
音よ止まってくれ。
ヒマが震えているのに僕までこんなんなら救いようがない。

『私の声を聞いて。』

騒がしかった音の中にほかの音を打ち消すかのように声が聞こえた。

どれだけ時間が経っていたのだろうかわからない。
ただ僕の鼓動や焦りはすっと消えていった。

下を向くと暗がりの中にツユちゃんがいた。
僕たち2人を抱えるように。
気づけばヒマの震えも止まっていた。
 
「ハギ、一命取りとめたって。」

ツユちゃんが続けて言った。
ただ顔は曇っていた。
 
「…なんで嬉しそうじゃないんだよ。」
安堵しきれない空気に僕は強く聞いてしまった。

「…私が聞いたのは…一命「は」取りとめた。だった。」
ツユちゃんも少し声を大きくして答えた。
腰下へ握り下ろした拳は微かに震えがわかる。

「…今から説明してくれるらしい。」

僕らはツユちゃんの後に続いて院内を歩く。
合流したクワも加わり、僕らは暗がりの中ハギの元へ向かう。

静かな院内には僕らの足音だけが響いた。
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