花束に囲まれた君が残したもの。

ー天変地異ー

病室の行くとそこには小学生くらいのハギの妹さんと、頬にガーゼを当てて俯くシーちゃんがいた。
妹さんの名前は確か…

「初めまして。萩原 さくらです。」

静かに自己紹介をしお辞儀をしてくれた。
釣られるように僕らもお辞儀をする。
2-3年前ハギの家に遊びに行った時に何回か会ったことがあったが、見かけがだいぶ変わっていてわからなかった。

「さくらちゃん初めまして。右からクワ、ツユ、ハギ、ヒマです。」

代表してツユちゃんが紹介をした。
 
顔を上げると妹さんの隣に目を向ける。
そこには後頭部と右目、また腕や足などからだなどあちこちに包帯を巻かれた痛々しいハギがいた。

そんなハギの手をいち早く握りしめたのはクワだった。
 
「ハギっお前…」
 
「ハギ…」
「ハギくん…」
 
ヒマと僕は同時にそっと呟いた。
生きていたという安心感と痛々しい姿の悲しさが混ざってなんと言葉にしていいかわからなかった。

「お兄ちゃんは生きてるよ。」
 
妹さんは僕らに確証をくれるかのように僕らの目を見てはっきり言った。

「でも…」

「…さくらちゃん。ごめんね、ちょっと待って…あの…親御さんは?」

俯き涙があるれそうになる妹さんの言葉を遮ったのはツユちゃんだった。
妹さんの前にしゃがんで肩に手をかける。
 
「…海外出張中なの。急いで戻ってくるとは言ってたけど…」
妹さんは震えながら答えた。

「そっか…」

ツユちゃんはそういうと、妹さんを抱きしめた。

「一人で怖くて…不安だったよね…」

ツユちゃんがそういうと妹さんは我慢していたのであろう。
大量の涙を零しながらツユちゃんの背中に手を伸ばした。
 
「…お兄ちゃんね…頭打っちゃって…いつ起きるかわかんないんだって…助かったんだけど分からないんだって…」

ツユちゃんの腕の中で震えた涙声で言った。
まるでお姉ちゃんに語りかけるように。
ツユちゃんは涙をこらえながら妹さんの背中をさすっていた。

「そっか。そうなんだね…」
まるでさくらさんのお姉ちゃんのように優しく声をかける。

2人を照らす病室からの月の光は、風になびく木の影に重なり、揺らめいていていた。
 
たった一人、親族としてこの状況に向き合っていたんだ。被害者の状況は一番に親族に知らされる。
小学生というまだ幼い少女がどれだけの気持ちで耐えていたか。

僕らには想像ができなかった。
院内の待合所で取り乱していた僕らよりとても立派で勇敢だ。
そしてそれをいち早く気づいたツユちゃんも。

2人の様子を見たヒマもそっと動くとシーちゃんのそばに行って両手を握る。
俯いていたシーちゃんの顔がそっと上をむくと、そこには歯を食いしばり、涙を我慢する様子があった。
 
「いいんだよ。泣いても。」

ヒマがそっと震えた声でつぶやく。

「…わ、わたしのせいだ…わたしが…わたしが…あの時喧嘩なんてしなければ…ごめんなさい…ごめんなさい…」

まるでヒマに助けを求めるかのように、堪えてた言葉を一つ一つこぼす。
ヒマは一つ一つの言葉に対して丁寧に頷く。

僕は横たわるハギの元へ行った。
痛々しいハギの顔を覗きながら思いをぶつけた。

「なぁハギ…起きてくれよ…女の子を泣かすなんてハギらしくないじゃないか…なぁ。ダメだろうこれは…」
 
泣き声と静寂が入り交じる部屋でどれだけの時が経ったのかは分からない。
気づくと口元の右下にホクロがある大人びた看護師の人がコツコツと部屋に入ってきて、

「お気持ちはお察しますが、夜も遅いしお友達は帰りなさい。それと親族の方はまだ幼くておひとりだと心細いでしょうから…ツユさん、もし残ってあげれるなら残ってもらっても大丈夫?」

 そういわれ、僕らは病室を後にした。妹さんとツユちゃんだけは病室に残ることになった。

病院内を歩く時も外に出た時も僕らは黙り込んだままだった。
交差点での分かれ道で、「じゃあ…」とだけ呟いた。

「また明日ね」と言いかけたが、明日が変わってしまった明日を迎えるのが辛くて言葉に出来なかった。

日常は変わる。
それは良いようにも悪いようにも。
良いことを築くまでは時間がかかる。
あの日流星群を見るために沢山交わしたあの日々のように。

そして悪いように変わるのは一瞬で。
崩れ落ちていく。
これからどうして行くことが正解なのか。

僕は帰路の最中、整理しきれない頭の中を一生懸命フル回転させた。
家に着いた僕はまるで屍のようで。
落ちているカメラにも気づかず、月明かりの眩しさも忘れて布団の上で眠りについていた。
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