花束に囲まれた君が残したもの。

ー変心ー

僕らはそれから、学校終わりや休日を使って撮影を始めた。

みんな慣れないなりにも演者として、懸命にやり切ろうとした。
その中でツユちゃんとヒラは特段演技が上手いなと感じることが多かった。
その次にヒマ。
1番ぎこちないのはクワ(と僕)だろうか。

でも今回必要なのは上手い下手じゃない。
「らしさ」が必要だからそれでいい。

「ちょっと休憩しよう。」

今日は海での撮影だった。
冷たい海風が僕らの体力を奪っていった。
でもみんなの顔は明るく楽しそうで。

楽しそうに話す姿を僕は砂浜に座って遠目から見ていた。
ぼーっとみんなを見ていると急に頬に熱さを感じた。

「あつっ」
「おつかれ。」

驚いて振り向くとそこに居たのは笑いながら2缶のコーヒーを持ったヒラだった。
ヒラは1缶コーヒーを僕にくれた。

「順調かい?」 
ヒラも一緒に座り込み僕に話しかけてきた。

「んーぼちぼち。撮影は順調なんだけど、僕の編集技術がなくて苦戦しているって感じ。でもみんな頑張ってくれてるし、なんとかなる。なんとかする。よ。」 

僕はコーヒーのプルタブを開けて2、3口、ゴクッゴクッと飲んだ。
冷えきったからだにコーヒーの温かさが巡る。

「ハハッ。椿、なんか変わったな。」
ヒラは空を見上げて言った。
 
「どういう意味だよ。」
 僕はムスッとしてヒラに言い返した。

「いい意味だよ。」
 ヒラは目を瞑りそう呟いた。

「椿さ、みんなと会う頃まではあまり他人に興味なかっただろ。ま、そこが俺の周りにはいないタイプで興味持った部分でもあるんだけどさ。けど今はみんなのこと考えてる。その変わったツッキーに対しても俺は興味があるんだよ。」

そう言ってヒラは僕を見た。
 
「…変態だな。」

僕は白々しいと訴えるようにヒラを見た。

「酷いなぁ。興味でもあるし尊敬もしてるんだよ。特に真面目で正直のところとかさ。俺に持ってないものを椿は持ってる。だからいいんだよ。」

そう言ってヒラは自分のコーヒーを熱いといいながら勢いよく飲んだ。

「まぁ、無理するなよ。みんなで作ってるんだ。頼られるのも嬉しいかったりするからさ。それと…演技はもうちょい上手くやるのも大事だぞ笑。ツユちゃ…おっと…好きな子見てるのもバレバレだ。」

そう言ってヒラは立ち上がるとニカッと笑って、みんなの元へ駆け寄って行った。

僕は「余計なお世話だ。」と言いかけたが、ヒラが僕の変化を褒めてくれたことが結構嬉しかったので言うのはやめておいた。

好きな子がいることがバレたのはなんだか癪だったが……察しの良いヒラには今後隠し通せる自信がないので諦めた。
気を取り直して僕はみんなを見た。

「よし、撮影再開しよう!」

僕はみんなに向かって大きく声を掛けた。
なんだか僕の中でなにか乗り越えられた気がした。
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