花束に囲まれた君が残したもの。

ー頼まれごとー

クリスマス装飾最終日。
いつもと変わらず僕とヒマは山小屋へ向かった。

昨日のこともあったので、他の人を誘ってはどうかと聞いてみたが、サプライズにしたいとのことで結局僕らだけで向かうことになった。

相変わらずの夕暮れ。
冬は日が短い。
日が落ちるまであと30分ってところだろうか。
今日は山小屋の中を飾るから、まだ明るさを確保出来る。

昨日みたいなのはごめんだ…

そう思いながら僕は山道を歩いた。
山小屋に着くと部屋の中のランプの明かりを灯し、天井に吊るした。

ランプが風で揺れ、僕らの影は不規則に揺れる。
僕らは揺らぐ光の中、お互い黙々と飾りをつけていく。
引っ掛けられるものはヒマ。
釘を打つものは僕が飾っていく。

外の光はいつの間にかなくなり、真っ暗になっていた。
1時間くらい経った頃だろうか。
だいぶ部屋が装飾で溢れていた。

「そろそろいいんじゃないか…」

壁に向かって飾りをつけていたヒマに言いに行った。
ヒマは手を止めない。
僕は気づいていないのかと肩をそっと数回叩いた。

ヒマがハッとしたのがわかった。
慌てて僕を見る。

「ヒマ…?」

一瞬明かりが揺らめきがヒマの目に光るものを捉えた。

「どうしたんだ…?」

僕が聞くとヒマは唇を噛み締めた。
僕はヒマを絨毯の敷いてある所まで連れていき、近くにあった毛布を掛け、座らせた。

僕は明かりを床に置くと、ポケットに入れていた缶コーヒーの2つのうち1つをヒマに渡した。

「冷たい…」
「贅沢言うなよ。」
 
ヒマは少しずつコーヒーを飲んだ。
僕も一緒にコーヒーを飲む。

「落ち着いたか?」

僕はヒザに肘をおいて顎をついてヒマを遠くから覗き込むようにして聞いた。
ヒマはコクンと小さく頷いた。

今僕にできることはなんだろうか。
少し考えた後、そっと聞いた。

「1人で悩むな…話聴くくらいなら僕でもできる。」

頼って欲しい。
その気持ちで考えた言葉だった。
ちゃんと伝わったのか、ヒマが下を向きコーヒーを見ながら話し始めた。

「ツッキー、ツユちゃんの病気のこと知ってるでしょ。」

僕は動揺を隠せなかった。
最初の一言目に大きな話をされるとは思っていなかった。

「えっと…。」

「ごめん、意地悪だったね。ツユちゃんはハギ君の病室を出たあと、ツユちゃん自身の病室に行ったのを見かけたの…。だから私もツユちゃんに直接聞いてみたんだ。」

ヒマはコーヒー一口飲んで一息してから言った。 

「これは知らないんじゃないかな…」
 
 ヒマはそこまで言うと僕の顔を真剣の見て7文字呟いた。


ー…余命半年ー


僕は持っていたコーヒーを落としてしまった。
絨毯にコーヒーのシミができていく。

そんなこと聞いていない。
知らない。信じたくなかった。
動揺する僕を見てヒマも涙が溢れ出した。

「わたしね、流星群を見たあの夜、これからもみんな笑って一緒にいれますように。って願ったの…でもハギ君もツユちゃんも…一緒にいること、お願いするのって…贅沢なことだったのかな。」

僕に答えを求めるようにヒマは僕を見つめた。

僕は震えるヒマの手を強く握った。
僕だって泣きそうだった。
だけど僕はぐっと堪えながら、

「大丈夫。そのためにヒマはこの山小屋を飾ったんだろ。みんなで笑って過ごすために。」

ヒマを見てしっかり言葉にした。
ヒマは大きく首を縦に振った。

僕がしっかりしなきゃ。
病院の時ツユちゃんが僕らにしてくれたように。
彼女に『頼まれた』ことだから。
< 39 / 63 >

この作品をシェア

pagetop