花束に囲まれた君が残したもの。

ー同じ犯人ー

ツユちゃんはひと呼吸してから言った。

「…クワの両親、クワが小さい頃に亡くなってるの。」
僕は驚いた。
クワはそんな話、したことがなかった。
 
「クワがまだ小学…4年生の時だったかな。夏の日だった。その日はクワが高熱を出してしまって、車で家族で病院に向かっていた時だったらしいの。」

「そしたらね、飲酒運転の車が信号無視で衝突。相手は逃亡。ご両親はクワを庇って亡くなったんだって…」
 
ツユちゃんはまた下を向きながら寂しそうに話す。
 
「私とハギはその頃から一緒だった。その後クワはおばあちゃんの家に預けられたんだけど、事故後のクワは人が変わったように喋らなくなっちゃって。」

「おばあちゃんに悲しい顔を見せられなかったんだろうね。ひとりであの山小屋で籠って泣いてる姿を良く見かけたよ。」

クワと一緒に登校した日、ただおしゃべりなのかと思っていた。
でもあの姿はクワが周りに支えられながら辛さを乗り越えた姿だった。
 
「私とハギは何とかしたくて、無理やりギターを3本。あの山小屋に持ち込んだの。」

「ハギが言ったの、気持ちは歌詞に綴ってぶつけるんだよ。そう言ってギターを1本クワにあげた。それがあの山小屋の始まり。」

ツユちゃんは空を見る。

「クワね、あの日から毎日ハギのお見舞いに来てるんだよ。どんなに遅い時間でも。」

MVの撮影が遅くなる日もよくあった。
クワはその後も通っていたのか…
そう思うと少し申し訳なくも思った。
  
「最初は優しさただそれだけだと思ってた。けど…」
ツユちゃんは歯切れの悪い様子だった。
 
「けど…?」

僕は呟いた。
まさか…と思った。
 
「どうやら似てるらしいんだよね…両親を殺した飲酒運転の犯人が今回ハギを怪我させた犯人と。」

「え、どうしてそんなことが…?」
僕は少し大きい声で聞いた。

ハギが事故にあった日、一緒に居たのはシーちゃんだけ。なぜそんなことが…

「事故にあった現場の近くに居た人が見てたらしい。たまたま見えた運転手の雰囲気を。それをどうやって知ったか分からないけど…クワが知った。」

僕は唖然とした。
そんな偶然があるだろうか…

「だから私はクワにはまだ言っちゃいけない。せめてハギが起きるまでは。じゃないと…クワがまた1人になっちゃう。」
そう言うとツユちゃんは辛そうに咳をした。

僕は言葉が見つからなかった。
沈みかけている夕日が眩しすぎて痛かった。
僕らは沈黙の中、ハギのいる病院に向かった。
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