花束に囲まれた君が残したもの。

ー開花ー

12月25日金曜日。

クリスマスまではあっという間に時間が過ぎて行った。

学校も今週で終わり、冬休みに入る。
僕らは16時に教室に集合して、みんなで山小屋に向かうことにした。

この日は朝からみんな落ち着きがない様子だった。外は珍しく雪がパラパラと降っていた。

僕は授業中、頭の中で今日の夕方のことをずっと考えていた。
僕にとっては初めてのもので超大作だ。
友人に見せるだけと言ってもやっぱり緊張はする。

1限目、2限目、3限目…
今日は時間がやけに早く感じた。

夕方、僕らは教室に集まる。
ツユちゃん、クワ、ヒマ、ヒラ、シーちゃん、ユリちゃん、そして僕。
 
ー結局ハギはまだ戻ってこなかった。

その事は誰も口にしなかった。
いや、しないようにしてた、という方が正解だろう。
 
僕らはみんなで学校を出ると、久しぶり『中村屋』に寄った。

ごめんください、と言って古い扉を開けるとそこには中村のばっちゃんは暖かそうなちゃんちゃんこを着ていた。

「あんたら来たのかい。」

中村のばっちゃんは少し見ない間にもう少し老けて見えた。
 
「ばっちゃん、暖かいものありますか?」

ツユちゃんは腰の曲がった中村のばっちゃんに、目線を合わせるように少し屈みながら聞いた。

「…大事にしなよと言っただろう…。」

中村のばっちゃんはツユちゃんを少し睨んで呟いたあと、ヒマやシーちゃんにまた「あそこ、あそこ…」と言ってカイロやマスク、暖かい靴下など防寒具を指さした。

はしゃぐ2人の後ろ姿はなんだか温かさを感じた。
ツユちゃんが棒立ちのまま呟く。

「まるでエスパーみたい…」

どこかで聞いたことのあるセリフだ…
 
カイロやマスク、マッチなど暖かくなるものを買い揃えて『中村屋』を後にした。

中村のばっちゃんは

「また来るんだよ。」

そう言って、僕らの姿が見えなくなるまで店前で杖をつきながら立っていた。
 
雪の溶けた山道をみんなで歩く。
雪解け水が木の葉から落ちてきて、たまに頭や肌に落ちてくる。

日が暮れて真っ暗なため、水が落ちる度に誰かびっくりする。
その度に声を上げるから、少しおかしくて。

高野に出るといつもの僕たちの山小屋に着いた。
ただいつもとは違う。
ヒマと僕で飾り付けをした大きい木がお出迎えをした。

「なんだこれ!すご!」
「クリスマスツリーだ!」

みんなツリーの周りをぐるぐるして、飾りを見ていた。
「ふふっ!」ヒマは大きな声で笑うと
自分の手提げのカバンからサンタ帽と髭を出してつけた。

「サンタからのクリスマスプレゼントだよ!」

そう言ってパチンと指を鳴らす。

その瞬間僕は明かりのスイッチを入れた。
ちなみにこの流れは事前に頼まれていた。

暗かった山小屋に一気に光が灯る。

「わぁ!」

みんなの歓声が上がる。

「メリークリスマス!!」

ヒマは笑顔で飛び跳ねながら言った。

「私とツッキーからのプレゼント!」

そう言いながらヒマは僕の右手を握り、大きく上に振った。

「やめろよ…ヒマだけでいいだろ。」
恥ずかしくて僕は言うと、

「何言ってるの!」

そう言ってヒマは僕の頭にチョップを入れた。
 
「痛てぇ。」
「これでおあいこね!」

そう言うとヒマはツユちゃん元に走って駆け寄る。
僕の手元にはヒマの脱ぎ捨てられた帽子とつけ髭が置かれていた。
 
「びっくりした?」

ツユちゃんはヒマに驚き振り返ると、笑いながら数粒の涙を流していた。

「ほんとにびっくり。」

ヒマはその表情に戸惑い少し固まっていた。
 
「ありがとう。」

そう言ってツユちゃんはヒマに抱きついた。
ヒマは少し笑ってそっと腕を回す。

「来年も見ようね。今度はハギくんも一緒に。」
「…うん。」

僕は2人をそっと遠目で眺めていた。
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