花束に囲まれた君が残したもの。

ー多彩色ー

ヒマのサプライズが終わったあと、みんなで山小屋に入り、ランプの火をつける。
クリスマスの装飾とランプの火で山小屋は1層明るくなる。

少しくつろいだあと、
「あの!」と一言すっと手を挙げたのはシーちゃんだった。

「私からもサプライズあるの!」

そう言って、シーちゃんの大きい手提げカバンから取り出したのはA3サイズの木製のキャンバスだった。

シーちゃんは一言、
 
「メリークリスマス!」
 
そう呟くとキャンバスをひっくり返す。
そこには油絵でクリスマスの夜、雪の中星空を眺める8人の影が描かれていた。

シーちゃん、ツユちゃん、クワ、ヒマ、ユリちゃん、ヒラ、僕、そしてハギ。
 
「願いを込めて描いたの。」

そう言ってシーちゃんは一生懸命笑った。
目には涙が今にも溢れて落ちそうだった。

現実になるはずだった景色。

「大丈夫。きっと来年は。」

そうシーちゃんに呟いたのはクワだった。
クワは壁に釘に吊り下げられていた飾りをひとつ取ると、シーちゃんのキャンパスをそこに飾った。

「いいね。」

ヒラが続けて言った。

僕はツユちゃんの方を見た。
ツユちゃんは座りながら壁にかかった絵を真剣に眺めていた。

彼女は何を思ったのだろうか…分からなかった。

「私もあるんだから!」

次に手を挙げて名乗り出たのはユリちゃんだった。

「ほら、シオン、ヒラ。」

ユリちゃんが言い終わると、3人はみんなの前に行き、ヒラがクロスを引き始める。
 
「「「メリークリスマス!」」」
 
そう言うとテーブルの上に出てきたのはクリスマスツリーやサンタクローストナカイなど、デザインされたクッキーや焼き菓子だった。

「すごーい!」

ヒマとツユちゃんが飛び跳ねるようにしてクッキーを手に取る。

「これ作ったの?」

クワは興奮気味に聞いた。

「そうだよ。料理得意なの。絵は苦手だからシオンに描いてもらったんだけどね。」

ユリちゃんは自慢げに言った。

夏にこの山小屋に来てた時は、少し険悪な雰囲気だったけど、仲良かったんだ。
そんなことを思いながら僕は2人の様子を見ていた。
僕もクッキーを手に取る。

「なんだこれ…イノシシ?犬?」

僕のクッキーにはよく分からない茶色の物体が描かれていた。

「トナカイなんだって。」
シーちゃんが小声で僕に言った。
 
「これもしかして…」

僕はヒラの方を見た。
ヒラは僕に気づくと少し顔を赤くして

「ちょっバカ、なんでよりによってお前が気づくんだよ!」

ヒラは僕のクッキーを取ろうと駆け寄ったから必死で死守した。

「作ってるの見てたら自分も描いてみたくなったんだって。」

シーちゃんが笑って言った。
 
「なるほど〜イケメンにもできないことがある訳ねぇ。」

僕はにやにやしながらヒラに言った。
やっと弱みを握れた気がして少し勝ち誇った気分だった。

「食ってやる!」

僕がクッキーを持って左右に動かしてた腕を抑えて、クッキーを口にくわえた。

「あー!!写真撮ってなかったのに!」
僕は叫んだ。

「へんっ証拠隠滅!」

今度はヒラが勝ち誇ったようだった。
そしてヒラは他にも自分のクッキーがないか探しに行った。

「…あとふたつあるよ。」

隣でユリちゃんがぼそっと呟く。

「そして写真もある。ハギの写真10枚と交換でどう?」
ユリちゃんは口に手を当てて聞こえないように言った。

「ノった。」
僕も静かに答えた。

他のクッキーを手に取って僕は2、3枚食べたあと、少し深呼吸をして大きな声で言った。

「次は僕の番。」
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