花束に囲まれた君が残したもの。

ー孤独な闘いー

山小屋の一件後、僕らは病院や家に戻った。クワも念の為病院へ行くことになった。

「まさか3人で病院なんてね。嬉しくないなぁ。」
ツユちゃんは笑って言った。

帰りはクワ、ハギ、ツユちゃんの3人を乗せた救急車は病院に戻って行った。
僕とヒラは残りの女子3人を家まで送ったあと各自家に帰った。

その時の会話はあまり思い出せない。
 
「水も滴るいい男だね。」と茶化したことだけば覚えているけど…
 
それくらい色々濃い1日だった。

僕は疲れきって、家に帰ってすぐに寝てしまった。

ーーー

あっという間に朝になり太陽の日差しが部屋に差し込む。
あまりに普通に朝が来るものだから、昨日の出来事は日々の中の一部に過ぎないと言われているようだった。

僕は学校へ行く支度をして朝ごはんを食べる。
朝ごはんを食べると歯磨きをして寝癖を治す。
変わらない日常だ。

家を出て少し歩くとヒマとシーちゃんが歩いていた。

「おはよう。」
僕は声をかけて先に学校に向かう。

いつも通りホームルームをして授業が始まる。
国語に数学に理科、社会科……淡々と先生は説明をする。

クワはもう登校していたが、ハギとツユちゃんの姿は教室になかった。

僕は光が差している廊下をみながら、窓枠に頬杖をつき、色々あったな…と思っていた。

数日が経った帰り道、僕はクワとふたりで話をする機会があった。
僕は気になっていたことがあってようやく聞くことができた。

「クワはいつからツユちゃんの病気を知ってたんだ?」

ずっと疑問に思っていた。
あの炎が舞った日、クワは「ツユが病気になった」と話していたけど、病気であることはいつ知ったのだろう…と。

車椅子に乗っている姿だけでは病気とは結びつけにくいように感じていた。

クワは「察しがいいな。」と笑いながら教えてくれた。

「ハギが入院する前からだよ。確証がなかったから聞かなかったけど。それこそあの夏だ。ツユが普段以上に明るく振舞おうとしてたからかな。それが俺にとって少し違和感だったんだよ。急にライブハウスを解禁しようって言い出すしさ。」

僕は驚いた。
ツユちゃんも言わないようにしてると言っていたから、てっきり全く知らないと思っていた。

「でも、その理由をさ、隠すのには訳があると思って。ツユから話があるまでは知らないフリしようって思ったわけ。」

クワは笑いながら話を続けた。
クワは誰よりも早く知っていたのにひとりで気持ちを耐えていた。

「ちなみに看護師がハギとツユを狙ってたことは、病院に頻繁に行ってたから気づいた。明らかに2人を見る目が違ったし、備品庫でなにかを物色してたのを見かけたから。」

「だからお見舞いついでに毎日なにかしないように監視してた。ツユの病気もそこで確証に変わった。そこでさらに抑止するためにあの看護師のシフトも調べて、呼び出したんだよ。」

「まさかその日にハギが目を覚ますとは思ってなかったから、少ししか足止めできなかったけど。」

クワは少し息をゆっくり吸って空を見て話し始める。
 
「みんながハギに会えたって連絡来て、気持ちが変わったんだ。もちろんあの日に話した俺の気持ちは本音。でも今は打ち明けたおかげが少しスッキリしてる。」

「ひとりで抱え込むのは良くないな…」

僕の方を見てクワはニカッと笑った。
僕はただその笑顔を横目で見ていた。
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