花束に囲まれた君が残したもの。

ー中村屋ー

「中村屋」は学校からたった5分歩いたところにある。

道なりに木陰は多いものの、5分歩いただけでインドアの僕にとって外は暑くてたまらなかった。
 
「中村のばっちゃんガリガリ君期間限定のあるー?」

クワはそう言いながら少し古びたお店の扉を開けた。

「ただでさえ暑いのに暑苦しいやつが来ただね。」

そう眉間に皺を寄せてレジのカウンターから顔を出したのは店主の中村のおばさんだ。
ツンとしてるところはあるが親しみやすさからみんな中村のばっちゃんと呼んでいる。
 
「ほら新しい梨味あるだろぅ。」

そう言って中村のばっちゃんはアイスボックスに目をやる。クワは一目散に飛びついた。

「あと懐中電灯と、蛍光リボンのテープと、うーんと…あ!花火とかシャボン玉とかありますか?夏っぽいもの!」

「花火いいね。」
ツユちゃんとハギが目を輝かせながら話している。 

「あっこ。あとそことそのほら手前にあるだろう。あと夏かは知らんが風鈴はそこだよ。」

中村のばっちゃんは立ち上がって曲がった背中に片手を当てながらもう片手で店内を指さした。

「風鈴…!夏っぽい!」
そう言うとツユちゃんは風鈴を手に無邪気に笑った。

そんな姿を中村のばっちゃんはじっと見つめる。
ツユちゃんは一瞬きょとんとした顔をした後、中村のばっちゃんを笑顔で見つめ返した。

「欲しい物がなんでもあるねここは。まるでエスパーみたい。」
ハギが呟く。

「君らの考えることなんて私にはすぐ分かるんだよ。」

そう言って中村のばっちゃんは僕らを背にレジに戻る。
結局僕らは懐中電灯、蛍光リボンテープ、花火、シャボン玉、風鈴、そして全員分のアイスを買って外に出た。

「また来ます。」
とツユちゃんが最後に言うと中村のばっちゃんは

「大事にしなよ…」

と一言呟いた。

< 9 / 63 >

この作品をシェア

pagetop