意地悪な副社長に狂うほど愛される
「私は……」

副社長は私から離れた。
私は複雑な思いで彼を見つめた。

「なら俺からはキスしない」
「え?」
「無理強いはしたくない。したいならキミからしろ」
「なんですって?」

私はカッと頭が熱くなったのを感じた。
これは紛れもなく怒りだった。
副社長はイタズラっぽい誘惑的な表情を浮かべた。

「しないなら帰るだけだ。送っていく」

私は副社長の唇に目線を送り自分の下唇を無意識に噛んでいた。

「ずるい人ですね」

副社長は笑みを浮かべるだけで何も言わない。
どのくらいそうしていただろうか。
私たちは黙ったまま見つめ合った。

こんな関係になりたくない。
あのままAIの副社長と疑似恋愛している時が幸せだった。
せっかく話せることになったのに、なぜこんなにもーー

「帰るか」

副社長がそう言ってハンドルを握った時だった。
私は身体を副社長に寄せ、軽くキスをした。
唇をすぐに離し彼を見つめた。

「したね」

逃げようとしたが遅かった。
片腕を引っ張られ、もう片方の空いた手で後頭部を持たれた。
次の瞬間、副社長の顔が近づき再び唇が重なる。
最初は優しかった振れるだけのキスが、徐々に押し付けるようになり私は声を小さく漏らした。
それが合図だったかのように副社長の舌が入ってこようとした。

「口をあけて」

キスしたまま言われ、そのイヤらしさに頭がしびれた。
言うとおりにすると副社長は小さく笑った。

「いい子だ」

舌が入りこむと気持ちよさでどうにかなりそうだった。
絡み合うキスはファーストキス――から2番目のキスとしては、どうにも刺激が強すぎる。
私は息がうまくできず、副社長が離れた時は顔が上気して息切れをしていた。

「なんて顔だ」

副社長が熱い吐息とともに言う。

「そんな顔をしたら止められなくなるかもしれない」

全てを言い終わらないうちに副社長は再びキスをしてきた。
それには私への欲望を感じる。
しかし私は涙が出てきた。
嬉しいからではない。
副社長はハッとしたように離れた。

「送っていく」

私はアパートに着いても、着いてからも涙が止まらなかった。
< 19 / 55 >

この作品をシェア

pagetop