意地悪な副社長に狂うほど愛される
「突然来てしまって申し訳ございません。早くあなたにお会いしたかったの」

会社近くにあるホテルのラウンジに場所を移し、駿は凜華と対面した。

「わざわざご足労いただき、ありがとうございます」

駿の微笑みに凜華は頬を染めた。

「怒らないんですね」
「怒る? なぜ?」

凜華は膝の上で組んでいた手をモジモジと動かす。

「連絡もなしに突然、来たことです」
「少々、驚きましたが気にしていませんよ」
「それはよかったです。お見合いの日をご提示しても全然、会ってくれないので我慢できなかったんです」
「すみません。忙しくて」
「では単刀直入に申しますわ。私はあなたとの結婚を前向きに考えています」

駿は黙って凜華を見つめた。
凜華の顔はどんどん赤く染まっていく。

「それだけお伝えしたくて」
「そうですか、しかし、あなたは私のことを知りませんよね? そんな相手と結婚することに抵抗はないんですか?」
「あなたのことは知っています」
「え?」

凜華は鞄の中から大きなファイルを取り出し、それを駿に渡す。

「見ても?」
「はい」

駿がファイルを開くと、そこには駿が今まで受けた雑誌の取材やテレビでのインタビューのメモなどぎっしりとファイリングされていた。

「あなたと将来、結婚するんだと父から言われて、どんな人か気になって」

駿は黙ったままファイルのページを見つめる。

「あなたを見ているうちに恋に落ちたんです」

駿はパタンとファイルを閉じた。

「そうですか」
「私は2年もの間、片想いしていたんです」

駿はじっと凜華を見つめる。

「とりあえずは」

そう言いながら駿は凜華にファイルを返した。

「お見合いの席で、もう1度、会いましょう」
「え? なぜ?」
「なぜ、とは?」
「もう私たちは知り合ったのだし、デートなどを重ねていけば良いでしょう?」
「デートですか」

駿はふとあゆ美のことを思い出した。
映画館での手や戸惑いの表情。

「誰かいらっしゃるんですか?」

語気の強い凜華の声に駿は微笑む。

「いいえ、お付き合いしている人はいませんよ」
「そうですか! よかった」

凜華はホッとしたように微笑んだ。

「とりあえず、今日はこれから会議があるので。また今度、お会いしましょう」
「ええ、お時間をとってくださり、ありがとうございます」
「こちらこそ、お会いできて光栄でした」
「ふふっ駿さんって完璧な人ですね」

凜華は微笑んでいて、駿もまた貼り付けた微笑は崩さなかった。
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