意地悪な副社長に狂うほど愛される

雨

「はい、わかりました」

副社長からまた呼び出された。
行きたくない。
私は定時と同時に会社を出た。
副社長室には行かなかった。
会社を出るまでドキドキして吐きそうだった。

その後は、駅まで無心で走り電車に飛び乗るとようやく息がまともに出来た。
電車から窓を見つめると雨が降り出していた。
傘を持っていない私は、ため息をつく。

強くなった雨に諦めつつも、ずぶ濡れの状態で走ってアパート近くまで着いた。
その時、アパートの前に高級車が停まっているのが見えた。
私は心臓が凍り付き、そのまま引き返した。
近くの公園に行き、雨宿り出来そうなベンチを見つけたので、そこに座った。

なんでーー


アパートの前では後部座席に太郎が乗っている。

「遅いな」
「会社を出たという連絡は来ているのですが」
「ふん、これ以上は待てん」

車はアパートの前から立ち去った。


公園で息を整えた私は激しくなる雨を見つめていた。
ずぶ濡れなので、少し寒い。
またカプセルホテルに泊まろうか悩んだが、既に今月、使える分のお金はなかった。

「貯金しようかな・・・・・・」

将来のことを考えて貯金した方がいいということをテレビで聞く度に自分とは無縁と考えてしまう。
私にとっては今と過去しかない。
どう考えても、幸せな未来を描くことが出来ない。
だったら私は今を大切に生きたい。
そして、お世話になった施設に恩返しがしたい。

それだけで生きてきたはずなのにーー

今の私は全然、今を大切に生きていない。
欲望のまま、生きている。

どれだけの時間、ベンチに座っていたのだろうか。
鞄からスマホを取り出して時間を確認すると既に1時間以上も経っていた。
さすがに副社長も諦めて帰っただろう。
そう思って止まない雨に再び飛び出そうと決意して立ち上がった時だった。
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