意地悪な副社長に狂うほど愛される

風邪

気がつくと病院にいた。
医師の説明によると高熱で倒れ、栄養も足りてなく点滴を受けることになったらしい。
確かに最近、あまり食事をとっていなかった。

ここへ運んでくれたはずの副社長の姿はなかった。

入院にはならず、私は点滴後に風邪薬をもらい、家に帰された。

結局、3日も会社を休むことになった。
電話をすると副社長がそうするように総務部に直接、行ったらしい。

薬のせいもあってか、久しぶりにぐっすりと寝れた。

病み上がりで会社に出勤した朝、やけに視線が突き刺さった。

「おはようございます。3日も休んでしまって」

部屋に入り、謝罪をしようとしたとき、総務部のメンバーに取り囲まれた。

「宮木さん! 副社長とどういう関係なの!?」
「付き合ってるの?」
「資料室で何があったの?」
「なんで、副社長が!?」
「な、なんの話ですか?」

始業前、簡単に説明してもらうと私は顔が真っ青になった。
どうやらあの日、倒れた私を抱き上げた副社長が突然、エントランスに現れて玄関に止まっているタクシーに乗り込んだらしい。
たまたまランチタイムに入ったばかりで多くの社員が目撃したらしい。

「私、見てたんだけどタクシーの中でも、あなたを大切そうに抱きしめたわよ」

佐々木さんは指を組んでうっとりと遠くを見ている。
始業時間になり解放されたが、私の顔は熱かった。
また熱が出そうだ。

お礼を言わないと――

私は定時で上がり、副社長室へ向かった。
受付に声をかけると休みであるということを伝えられた。
仕方なく総務部に戻って帰り支度をしていると電話がなった。
表示を見て驚いた。

『AIではない御堂駿』

登録した覚えのない表示があり私は想わず画面を胸に付けて廊下に小走りに出た。
そのまま非常階段へ向かって人が居ないことを確認すると電話に出た。

「もしもし」
『俺の家に今から来い』
「え?」

副社長の声だった。
でも少し違う。
鼻声な気がした。

「副社長?」
『風邪 ……うつされた。責任取れ』
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