意地悪な副社長に狂うほど愛される
それでも自分の欲望を押し殺して私は副社長の腕から無理矢理、抜けた。

「帰りますね」
「なんで」

副社長は気怠そうにベッドに寝ている。

「もう元気そうなので」
「どこが、元気じゃないけど」

そう言うと副社長は起き上がり私の腕を取った。

「帰らせて下さい」
「ダメ」

そして腕を引いた。
顔が近づくとゆっくりとおでこを私のおでこにあててきた。

「ほら、まだ熱がある」
「じゃあ、自分のベッドで寝て下さい」

私は副社長と目が合わないように下を見た。
ドキドキしている。

「寝かしつけて」

副社長の手を掴んで寝室へ向かい、副社長をベッドに寝かせた。
一度、キッチンへ行き、すぐに戻る。

「これだけでも食べて下さい」

私はもものゼリーを副社長に渡した。
副社長がそれを平らげるのを見届けると再び薬をチョコゼリーの中に埋めて渡した。

「こっちのゼリーはいらない」
「こっちが大事です」

不満を言いながらも口を開けた副社長がやっぱりおかしかった。
そのまま副社長が寝るまで私は手を繋ぎ、寝息が立ち始めるのを確認すると「副社長?」と声をかけて反応がないのを確認するとマンションを後にした。

月曜日はとにかく働いた。
残っていた資料の整理を済ませて、滞っていた他の仕事も一気に片付けた。

「あんまり無理したらダメよ」

佐々木さんが気にしてくれたけど、私はなんだか、やる気に満ち満ちていたのだ。

このまま副社長は私を選んでくれるかもしれない――

そんな淡い期待が何処かであり、副社長のプライベートな表情を見たことで私は自分があたかも特別な存在になれたような気がしていたのだ。

それはまったくの勘違いだったというのに――
< 40 / 55 >

この作品をシェア

pagetop