意地悪な副社長に狂うほど愛される
「あゆ美を何処にやったんですか?」
「質問の意図が見えない」

彼も彼女の居場所を知らないのか。

「じゃあ、あなたが辞めさせたんですか?」

敵意の籠もった目を向けられる。

「なんで俺が?」
「あゆ美が令嬢との結婚に邪魔になって」

あまりにも馬鹿げた推理に俺は思わず笑みをこぼした。

「何を笑ってるんだ」
「申し訳ないが俺も彼女の居場所を知りたいくらいだ」
「え?」
「悪いが、彼女について俺がキミに伝える情報はないようだ。わかったなら職務に戻るように」

彼は納得ができないといった表情を浮かべたまま去った。


俺は仕事が終わると彼女のアパートへ向かった。
すっかり遅くなってしまった。
いつもなら、もっと早くに仕事を終えられるのに集中できなかったところを見ると自分でも、かなり動揺していることがわかった。

アパートに向かうと彼女の部屋の電気がついたいた。

なんだ、いるじゃないかーー

ホッとしてチャイムを鳴らすと知らない男が出てきた。

男ーー

頭にカッと血が上ったが、なるべく冷静さを装う為に扉を持つ手に力を込めた。

「誰ですか?」

男は不愉快な視線を送ってくる。

「宮木さんの会社の者です」
「宮木?」
「ここの住人ですよ」
「は? ここは俺が、ああ、前、住んでいた人ですかね?」
「前?」
「俺は2日前に引っ越してきたので」

自分の部屋にどうやって帰ってきたのか、思い出せないほど動揺していた。
ソファに座り、電話をかける。

「ああ、俺です。ちょっとお願いしたいことがあるんですけど」


翌日。会社で届けられた資料を見た。
宮木あゆ美の居場所はまだ不明。
自ら退職して引っ越しもしたことだけがわかった。
俺はいらついたため息をもらしながら、資料を机の上に投げ捨てた。

こんな情報、調べなくても知っているーー

昨日、知り合いの興信所に彼女について調べてもらうことをお願いした。
夜、お願いして、今朝、電話して、無理矢理もらった結果がこれというわけだ。

焦っているーー

自分でもわかっていた。

「何を焦っているんだ、俺らしくもない」

自傷気味に笑うしかなかった。

それから数日間もの間、彼女の行方は全くわからなかった。

「社長、何処か具合が悪いのですか?」
「え? なんで?」
「だって顔色が、それにちょっと痩せた気がします。病院を予約しましょうか」
「いや、大丈夫だ」

秘書が心配するほど俺はやつれているのか。
確かに最近、食欲はないし、睡眠もほとんど取れなくなっていた。

ああ、本当に情けないーー

手帳を開き、今週末に両家顔合わせがあることを思い出した。
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