意地悪な副社長に狂うほど愛される
「まだわからないのですか?」
俺は小さくため息をついた。
「わかりました、引き続き探して下さい」
スマホを机に置き、窓の外を見た。
俺はいったい何をしているのだろうかーー
彼女を見つけ出して、どうしようとしているのだろう。
婚約が迫っているし、このまま結婚してしまえば、取り返しがつかない。
ノックと同時に乱暴に兄が入ってきた。
秘書が困ったように続いたが、俺が手で制すると秘書は一礼して出て行った。
「おい! 本当に婚約するのか?」
「あまり大きな声で言わないで、もらえますか? 社内で噂になっては困るので」
「ふん、婚約するなら別にいいじゃないですか」
「まあ」
兄は俺の顔を覗き込んだ。
「お前、婚約破棄するつもりか」
「え?」
「そうなんだろ! なあ!」
兄は俺の肩を揺すった。
「なんで、そんなこと思うんです?」
なぜバレたのだろう。
「女に興味の無かったお前が急に結婚だなんて、ずっとおかしいと思っていた。どうせ社長になる為だろうとは思っていたけど、社長就任の後に婚約破棄をするつもりなんじゃないかって思ったんだ」
俺は図星をつかれて、思わず笑った。
「お前! なんで、そこまで!」
「あなたを社長にさせない為ですよ」
「なんだと!?」
あの時の記憶が蘇った。
「覚えていないんですか? あなたは新入社員たちの仕事を自分の手柄にした」
「それは、お前が」
「俺ひとりがしたことを奪われるなら別に構いませんでしたよ」
「そうだよ! お前が昔から俺がそんなことしても気にした様子なんて微塵も見せなかったじゃないか、なのに、急に態度が変わって」
「諦めていたからですよ。学生の頃までは自分1人の責任だったけれど、御堂グループに入るということは自分ひとりの問題ではないと気づいた」
俺は新卒の時に、周りから人がいなくなっていく時のことを思い返した。
俺に関わると出世がなくなる社員たちがいるってこと、もっと酷い場合は排除させられることがあると知った。
だからなるべく1人で出来る仕事のみをやり続けようとした。
「仕事をしている以上、1人で仕事をするには限界があります」
「そりゃそうだろう、特に俺たちのような人間にはな」
俺は鼻を鳴らした。
兄にキッと睨まれる。
「兄さんのその傲慢な考えが、ですよ」
「何がだ」
「兄さんは現状維持、おじいさんとお父さんが築き上げたものの上にただあぐらをかくだけ」
「なんだと?」
「そんな人が社長になったら、この会社は終わります」
「お前!」
気がついたときは床に叩きつけられていた。
唇が切れていることが触ってわかり、殴られたことに気づいた。
「久しぶり殴りましたね。そうやって言葉で反撃ができないとわかると、手を出す。本当に中学生の頃から、あなたは変わっていない」
兄の手は震えていた。
結局、この男はそういう奴なのだ。
臆病者で社長になる器ではない。
「俺が社長にならなければ、いけないんだ」
俺は兄の目を見た。
兄は恐怖に脅えた様な表情で俺を見た。
「俺は長男だから!」
兄の言っている意味が、わからなかった。
「俺は物心ついたときからずっと社長になるように言われていたんだ!」
そう叫ぶと兄は出て行ってしまった。
俺は床に座り込んだまま、呆然とした。
長男だから? ずっと言われてたから?
それがなんだ。
ずっとプレッシャーの中にいたかもしれないが、そんなものに潰される兄は、やはり社長の器ではない。
兄の気持ちはわからない。
想像もしたくない。
あんな自分勝手な兄ーー
それでも血の繋がった兄なのだーー
「副社長!」
秘書が驚いて近づいてきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ」
俺はさっと立ち上がった。
口に血の味が微かに広がって顔をしかめた。
俺は小さくため息をついた。
「わかりました、引き続き探して下さい」
スマホを机に置き、窓の外を見た。
俺はいったい何をしているのだろうかーー
彼女を見つけ出して、どうしようとしているのだろう。
婚約が迫っているし、このまま結婚してしまえば、取り返しがつかない。
ノックと同時に乱暴に兄が入ってきた。
秘書が困ったように続いたが、俺が手で制すると秘書は一礼して出て行った。
「おい! 本当に婚約するのか?」
「あまり大きな声で言わないで、もらえますか? 社内で噂になっては困るので」
「ふん、婚約するなら別にいいじゃないですか」
「まあ」
兄は俺の顔を覗き込んだ。
「お前、婚約破棄するつもりか」
「え?」
「そうなんだろ! なあ!」
兄は俺の肩を揺すった。
「なんで、そんなこと思うんです?」
なぜバレたのだろう。
「女に興味の無かったお前が急に結婚だなんて、ずっとおかしいと思っていた。どうせ社長になる為だろうとは思っていたけど、社長就任の後に婚約破棄をするつもりなんじゃないかって思ったんだ」
俺は図星をつかれて、思わず笑った。
「お前! なんで、そこまで!」
「あなたを社長にさせない為ですよ」
「なんだと!?」
あの時の記憶が蘇った。
「覚えていないんですか? あなたは新入社員たちの仕事を自分の手柄にした」
「それは、お前が」
「俺ひとりがしたことを奪われるなら別に構いませんでしたよ」
「そうだよ! お前が昔から俺がそんなことしても気にした様子なんて微塵も見せなかったじゃないか、なのに、急に態度が変わって」
「諦めていたからですよ。学生の頃までは自分1人の責任だったけれど、御堂グループに入るということは自分ひとりの問題ではないと気づいた」
俺は新卒の時に、周りから人がいなくなっていく時のことを思い返した。
俺に関わると出世がなくなる社員たちがいるってこと、もっと酷い場合は排除させられることがあると知った。
だからなるべく1人で出来る仕事のみをやり続けようとした。
「仕事をしている以上、1人で仕事をするには限界があります」
「そりゃそうだろう、特に俺たちのような人間にはな」
俺は鼻を鳴らした。
兄にキッと睨まれる。
「兄さんのその傲慢な考えが、ですよ」
「何がだ」
「兄さんは現状維持、おじいさんとお父さんが築き上げたものの上にただあぐらをかくだけ」
「なんだと?」
「そんな人が社長になったら、この会社は終わります」
「お前!」
気がついたときは床に叩きつけられていた。
唇が切れていることが触ってわかり、殴られたことに気づいた。
「久しぶり殴りましたね。そうやって言葉で反撃ができないとわかると、手を出す。本当に中学生の頃から、あなたは変わっていない」
兄の手は震えていた。
結局、この男はそういう奴なのだ。
臆病者で社長になる器ではない。
「俺が社長にならなければ、いけないんだ」
俺は兄の目を見た。
兄は恐怖に脅えた様な表情で俺を見た。
「俺は長男だから!」
兄の言っている意味が、わからなかった。
「俺は物心ついたときからずっと社長になるように言われていたんだ!」
そう叫ぶと兄は出て行ってしまった。
俺は床に座り込んだまま、呆然とした。
長男だから? ずっと言われてたから?
それがなんだ。
ずっとプレッシャーの中にいたかもしれないが、そんなものに潰される兄は、やはり社長の器ではない。
兄の気持ちはわからない。
想像もしたくない。
あんな自分勝手な兄ーー
それでも血の繋がった兄なのだーー
「副社長!」
秘書が驚いて近づいてきた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「ああ」
俺はさっと立ち上がった。
口に血の味が微かに広がって顔をしかめた。