意地悪な副社長に狂うほど愛される
副社長は私を大切に扱うように抱きしめた。
しかし、それ以上は何もしてこず、私たちは同じベッドで眠った。
副社長は私を抱きしめてくれて、私は初めて彼の胸で安心して眠ることが出来た。

朝方、目を覚ますと思ったよりも副社長の顔が近くにあって、ドキドキした。
唇を見つめ、吸い寄せられるように私は、そっと口づけた。
副社長の目がパッと開き、思わず身を引く。
しかし逃がさないといったように副社長は私の抱きしめる腕に力を入れて、引き寄せた。
顔が近くなる。

「自分から、したね」

デジャブ。
よく見ていた意地悪な笑みが浮き出てきた。

「起きていたんですか」
「ああ」
「なんて人!」
「寝込みに唇を奪う人に言われたくないよ」
「本当に、自分でも自分がわかりません」

観念したように私はうなだれた。

「本当に副社長に狂ってしまったみたいです」

そう言うと副社長は少しだけ目を見張ったあと、嬉しそうに顔を近づけて、あの激しいキスをしてきた。

「ちょ、まって」
「待てない、もうこれ以上、我慢できない」

顔を一瞬だけ離して早口でそう言うと再び激しいキスが降ってくる。
私は胸を押して副社長を離した。

「まったく、こっちはキミの為に大人しくしていたのに」

そう言うと私の怪我してない方の腕を掴み、ベッドに押しつけた。
副社長が覆い被さってくる。

「待ってください」
「いや?」

私は目を反らした。

「嫌ではないですけど」

顔が一気に熱くなる。

「そんな顔されたら襲えないよ」

そう言うと副社長は元の位置に戻った。

「すべて解決するまで待つさ。キミの気持ちも聞いていないしな」

私は副社長の横顔を見た。

私の気持ちなんて、とっくにわかっているくせにーー



それから数日間、不思議な生活をしていた。

「できました。どうぞ」
「ありがとう」

副社長がスマホを置いた。
朝食のワンプレートを副社長の前に置く。

「美味しそうだ」
「簡単なもので、すみません」

副社長が朝食を食べるのを見るのは今日で3回目。
キッチンに戻っても、食べる所作の美しさにうっとりしてしまう。
やはり育ちのいい人は食べ方にも品がある。
何度か「一緒に食べないの?」と聞かれたが何だか恥ずかしくて断った。
だから副社長が出勤してから食べている。

それにしてもーー

ちらっと副社長の顔を見る。

まるで同棲しているみたいーー

顔が熱くなったので、私は使用したフライパンを洗うことに集中することにした。
腕がまだ片方、使えないけど料理くらいはしたいと無理を言って副社長を説得した。

「たまには外出しては、どうだ?」
「そうですね、食材が減ってきたので」
「それは注文すれば良い、もっとキミの好きなことをした方が良い」
「でもスーパーも気分転換になりますし」
「それならいいけど」
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