第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
魔宝獣は――増えていた。
一体、二体。
闇の裂け目から、次々と這い出してくる。
だが。
「……数が増えたところで、同じことだ」
剣は下ろさない。
紅く燃えるガーネットは衰えず、
その足取りには、まだ余裕すらあった。
「前線は維持しろ。
下がる必要はない」
その一言で、騎士たちの背筋が伸びる。
恐怖が、命令によって押し込められていく。
次の瞬間――
――風が、変わった。
「――よいしょっと!」
澄んだ声が、戦場の空気を切り裂く。
緑の光が閃き、魔宝獣の群れの間を駆け抜けた。
現れたのは、
風に揺れる緑髪の騎士。
「邪気を払え――グリーントルマリン!」
剣先が鮮やかな翠に輝き、
振るわれた一閃が、魔宝獣を包む黒い靄を音もなく裂いた。
黒い霧が霧散し、魔宝獣が一瞬たじろぐ。
「……ほう」
アランはわずかに目を細める。
ただの軽口ではない。
この男――実力がある。
「アラン殿下、ですよね!」
緑髪の騎士は、戦場とは思えないほど軽い調子で言った。
だが、その立ち姿には一切の隙がない。
剣の角度。
重心の置き方。
呼吸の深さ。
――間違いない。
これは、前線に立てる騎士だ。
「助太刀、感謝する」
アランが告げると、
ルークはにっと笑った。
「いえいえ!
お嬢様が大変なことになってそうなんで!」
その背後に、さらに二つの影が並ぶ。
空気が、再び張り詰めた。
一体、二体。
闇の裂け目から、次々と這い出してくる。
だが。
「……数が増えたところで、同じことだ」
剣は下ろさない。
紅く燃えるガーネットは衰えず、
その足取りには、まだ余裕すらあった。
「前線は維持しろ。
下がる必要はない」
その一言で、騎士たちの背筋が伸びる。
恐怖が、命令によって押し込められていく。
次の瞬間――
――風が、変わった。
「――よいしょっと!」
澄んだ声が、戦場の空気を切り裂く。
緑の光が閃き、魔宝獣の群れの間を駆け抜けた。
現れたのは、
風に揺れる緑髪の騎士。
「邪気を払え――グリーントルマリン!」
剣先が鮮やかな翠に輝き、
振るわれた一閃が、魔宝獣を包む黒い靄を音もなく裂いた。
黒い霧が霧散し、魔宝獣が一瞬たじろぐ。
「……ほう」
アランはわずかに目を細める。
ただの軽口ではない。
この男――実力がある。
「アラン殿下、ですよね!」
緑髪の騎士は、戦場とは思えないほど軽い調子で言った。
だが、その立ち姿には一切の隙がない。
剣の角度。
重心の置き方。
呼吸の深さ。
――間違いない。
これは、前線に立てる騎士だ。
「助太刀、感謝する」
アランが告げると、
ルークはにっと笑った。
「いえいえ!
お嬢様が大変なことになってそうなんで!」
その背後に、さらに二つの影が並ぶ。
空気が、再び張り詰めた。