第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
仲直り
ディラン、意外と早い。
足が長いからだろうか。そんなことを考えてしまう自分が情けない。
「で、ディラン!!」
思いきって声を張り上げると、その背中がピタリと止まった。
……お、追いついた。
追いついた、けど――
私は、なにを話すんだ?
え?
なにを言えばいいの?
頭の中で、ルイとの会話がぐるぐる回る。
――ちゅーとぎゅーすればいいのよ。
いやいやいや、
それは違う。絶対違う。
「あ、あの……」
喉がひっかかる。
胸がぎゅっと縮む。
「で、ディラン……」
もう一度、名前を呼ぶ。
……でも。
止まったままの背中は、
それでも振り向いてはくれなかった。
「今は……俺とは、話したくないだろ?」
振り向かないままの声。
低くて静かで――それなのに、胸の奥に刺さるほど寂しさが滲んでいた。
……拗ねてる?
それとも、怒ってる?
どちらにしても、このまま背中を見送るなんてできない。
私は一瞬ためらってから、そっとディランの服の裾をつかんだ。
その瞬間、ディランの体がわずかに強張る。
あ、やっぱり。
「ねぇ、こっち向いて」
「……いまは、無理だ」
その一言で、胸がぎゅっと縮む。
「なんでよ。心配して、来てくれたんでしょ?」
責めたいわけじゃない。
ただ、確かめたかった。
私のことを、ちゃんと見てくれているのかを。
「それは……そうだが……」
「ねぇ……」
考えるより先に、声が出た。
「仲直り、しよ」
ただ素直な気持ちが、ぽつりと零れた。
「喧嘩をしたつもりはないんだが……」
少し間を置いて、ディランが続ける。
「……でも、そうだな。俺が悪かった。あんなこと、二度としない」
「……わかった」
胸の奥の固さが、すっとほどけていく。
「私も、何も言わずにアラン殿下と出かけてごめんね」
「ああ。……心配した」
その一言が、嬉しくて。
「うん」
小さく頷いた。
足が長いからだろうか。そんなことを考えてしまう自分が情けない。
「で、ディラン!!」
思いきって声を張り上げると、その背中がピタリと止まった。
……お、追いついた。
追いついた、けど――
私は、なにを話すんだ?
え?
なにを言えばいいの?
頭の中で、ルイとの会話がぐるぐる回る。
――ちゅーとぎゅーすればいいのよ。
いやいやいや、
それは違う。絶対違う。
「あ、あの……」
喉がひっかかる。
胸がぎゅっと縮む。
「で、ディラン……」
もう一度、名前を呼ぶ。
……でも。
止まったままの背中は、
それでも振り向いてはくれなかった。
「今は……俺とは、話したくないだろ?」
振り向かないままの声。
低くて静かで――それなのに、胸の奥に刺さるほど寂しさが滲んでいた。
……拗ねてる?
それとも、怒ってる?
どちらにしても、このまま背中を見送るなんてできない。
私は一瞬ためらってから、そっとディランの服の裾をつかんだ。
その瞬間、ディランの体がわずかに強張る。
あ、やっぱり。
「ねぇ、こっち向いて」
「……いまは、無理だ」
その一言で、胸がぎゅっと縮む。
「なんでよ。心配して、来てくれたんでしょ?」
責めたいわけじゃない。
ただ、確かめたかった。
私のことを、ちゃんと見てくれているのかを。
「それは……そうだが……」
「ねぇ……」
考えるより先に、声が出た。
「仲直り、しよ」
ただ素直な気持ちが、ぽつりと零れた。
「喧嘩をしたつもりはないんだが……」
少し間を置いて、ディランが続ける。
「……でも、そうだな。俺が悪かった。あんなこと、二度としない」
「……わかった」
胸の奥の固さが、すっとほどけていく。
「私も、何も言わずにアラン殿下と出かけてごめんね」
「ああ。……心配した」
その一言が、嬉しくて。
「うん」
小さく頷いた。