第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「……セナ、すごかったね」

人のいない方へ移動しながら、私は小声で言った。

「いえ。
 あのまま続いていたら、正直……危なかったです」

「そうかな?」

「はい。殿下、完全にギアを上げてました」

少しだけ、間が空く。

「……私、バレてないかな」

ぽつりと漏らすと、
セナはちらりとこちらを見て、肩をすくめた。

「どうでしょうね」

(即否定しないあたりが怖い)

「あと」

低い声。

「次からは、もう少し自重してください」

「えー……」

「“えー”じゃありません」

完全に説教モードだ。

「潜入してるのに目立ってどうするんですか!」

「ごめん」

「まったく……」

2人して顔を近づけ、
周囲に聞こえないよう、こそこそ話す。

「それよりさ……
 “急ぎの案件”って、何だろうね」

「嫌な予感しかしません」

「だよね」

短く頷き合う。

「……追いますか?」

セナの問いに、私は迷わず答えた。

「うん」

2人で視線を合わせ、
気づかれないように歩き出す。

――まだ、合宿は折り返しですらない。
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