第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

「……だけどな」

アラン殿下はふいに真面目な顔つきになり、

「弟は、君と出会ってから明らかに変わった」

力強く断言した。

「人形みたいだった弟がだぞ?
 自分で考えて、悩んで、勝手に動き出したんだ」

「それ、普通では?」

思わず口を挟むと、

「いや、全然普通じゃない」

即答。

「今もそうだ。君のことになると――」

急に身振りが大きくなる。

「感情を、これでもかってくらい露わにする!」

胸に手を当てて、さらに熱が入る。

「この前なんてな、
 “あっ、今ディランが俺に嫉妬してる”って思って」

「……は?」

「兄としてはな?」

やや大げさに胸を張り、

「私を意識してくれてる!
 そして成長していると感じ、正直猛烈にドキドキした!」

その熱量に、私は思わず引き気味になる。

横を見ると、セナが小さく頷いた。

「……なるほど」

アラン殿下は満足そうににこにこしている。

「要するに」

セナが淡々とまとめる。

「アラン殿下は――
 重度のブラコンということですね」

「何を今さら」

即答。

「俺は誇りを持ってるよ。あんな可愛い弟がいてな」

胸を張るアラン殿下。

(……公言するタイプだった。それ本人に言ってあげてよ)

「それで?」

急に真面目な表情に戻る。

「他に聞きたいことはあるかい?」

私は一拍置いてから、切り出した。

「北側の部屋について、
 ご存知はありますか?」
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